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四大監査法人徹底比較③〜財務分析から考える監査法人【2016年決算版】〜

2017/03/17

photo by:pixabay

こんにちは、会計士GTRです。

2016年12月にトーマツの業績が公表されて、2016年も三大監査法人の業績が明らかになったので2016年6月期(トーマツは9月期)の監査法人の業績比較を行おうと思う。

前回法人ごとの分析をしたので、今回は法人感の比較に重点を置いた。

2015年6月期の業績比較は四大監査法人徹底比較①〜財務分析から考える監査法人【2015年決算版】〜をご覧頂きたい。

その他に監査法人の比較記事では四大監査法人徹底比較②〜口コミから考える監査法人評価〜も書いている。

 

以下単位
金額:百万円
人数:人
※金額は切り捨て、%は四捨五入で表示している。

 

 

 

 

監査売上推移 比較分析

監査売上

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 76,355 77,017 77,597 85,024
トーマツ 64,580 66,292 66,658 70,459
あずさ 67,757 67,431 68,101 69,875

監査売上はトーマツがあずさを抜かした。個人的にあずさがクライアント増やしているイメージがあったのでこれは意外だった。

2015年6月期まではほぼ横ばいで来ていたのが2016年6月期は全体として上昇傾向にある点が興味深い。

三大監査法人での合計は2015年6月期212,356→2016年6月期225,358と6%の増加となっており、業界全体として監査報酬値上げの動きがあるのかもしれない。

なお新日本の監査報酬売上が最も多く増加しているが、このうち約半分は東芝事件の対応での監査報酬増加分だ。

 

監査クライアント数

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本  3,887 3,975 4,084 3,971
トーマツ  3,642 3,587 3,574 3,427
あずさ  3,245 3,265 3,325 3,402

実は新日本もトーマツも監査クライアント数は減少傾向にある。

監査売上ではトーマツがあずさを抜かしたのに対し、監査クライアント数ではあずさがトーマツを抜きそうという全く逆の状況となっているのが興味深い。

ということはトーマツはクライアントあたりの監査報酬が上昇しているということだ。

 

監査の客単価

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 19.6 19.4 19.0 21.4
トーマツ 17.7 18.5 18.7 20.6
あずさ 20.9 20.7 20.5 20.5

やはり新日本とトーマツは監査客単価が上昇している。

クライアントが突然入れ替わることはないため、既存のクライアントに対し値上げをしていることが原因と考えられる。業界全体として監査報酬の上昇傾向にあると言えるだろう。

 

非監査売上推移 比較分析

非監査売上

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 16,153 19,391 21,578 21,457
トーマツ 19,291 20,253 22,519 26,019
あずさ 12,324 13,303 15,056 20,020

非監査売上はトーマツ強しという状況には変化なし。

最近新日本に追い上げられていたが、今期は新日本が失速してまた少し差が開いたという感じだ。

 

非監査クライアント数

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 3,070  3,383 3,583 3,361
トーマツ 3,216  3,480 3,526 3,653
あずさ 1,919  2,008 2,073 2,197

非監査クライアント数は新日本とトーマツに対しあずさがかなり少ない。

新日本は非監査クライアント数は減少しているが、トーマツとあずさは増加傾向。

 

非監査客単価

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 5.3 5.7 6.0 6.4
トーマツ 6.0 5.8 6.4 7.1
あずさ 6.4 6.6 7.3 9.1

非監査クライアント単価で見るとあずさの金額が大きい。

あずさは大企業や大型の案件に絞って非監査業務を提供していると考えることができる。

 

総売上推移 比較分析

 

 

売上合計

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 92,508 96,409 99,175 106,482
トーマツ 83,872 86,546 89,177 96,478
あずさ 80,081 80,734 83,157 89,895

監査売上と非監査売上の合計では上記の推移となる。

業界全体として監査報酬値上、非監査強化により売上増加傾向にあると言える。どの法人もグラフの傾きは同じ傾向を示している。

なお、新日本は東芝事件で東芝からの監査報酬が1,025百万円→5,342百万円と(嬉しくない)ボーナスがあったが、監査人交代となったので来年からはこれがなくなる。仮に2016年6月期の東芝監査報酬分を除くと以下のようになる。

 

売上合計(東芝を除く)

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 92,508 96,409 99,175 101,140
トーマツ 83,872 86,546 89,177 96,478
あずさ 80,081 80,734 83,157 89,895

東芝を除いただけでグラフの印象がだいぶ異なって見える。

新日本の売上伸び鈍化に対し、トーマツとあらたが急速に追い上げているという実態が見えてくる。新日本とトーマツの売上差は50億円を切っている。

新日本は東芝意外にも、大企業を含めてかなりの企業流出があったのでおそらく2017年6月期は売上減少に転じる可能性が高い。逆にトーマツやあずさはそれらの企業から監査を受注することで売上増加に転じるはずであるから、長いこと日本の監査業界トップであった新日本がトップから転落する日は遠くないかもしれない。

 

 

公認会計士の人数推移 比較分析

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 4,223 4,575 4,581 4,481
トーマツ 4,234 4,369 4,390 4,392
あずさ 4,174 4,158 4,246 4,360

東芝の影響があってか新日本の人数が減少。トーマツはほぼ横ばいであずさが人数を増やす形となった。2015年合格者の採用ではあずさが人気だったことが理由の1つとも言えるだろう。

おもしろいのは三大監査法人の人数の合計は2015年6月期13,217人→2016年6月期13,233人とほとんど増減がない点。その視点で見ると新日本からあずさに人が移ったとも言えるかもしれない。

 

会計士等一人あたり人件費

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
新日本 15.1 15.4 15.2 16.4
トーマツ 15.6 15.4 15.3 16.4
あずさ 13.6 13.8 13.8 14.6

本来は全従業員数で比較したいところだが、あずさが会計士等以外の従業員数を載せていないため会計士等一人あたり人件費で比較すると上記のグラフとなる。

全体として2016/6期は前年比で増加傾向にある。新日本とトーマツはほぼ同じ数字で、あずさは金額に差はあるものの増減の傾向は共通シていると言える。

要因は色々考えられるが、監査厳格化による残業増加、売上増加に伴う賞与増加、非会計士採用の増加などが考えられる。

見方によっては、監査厳格化の流れで個人の負担が増えて残業代も増加→それを監査報酬に上乗せしたことで監査報酬は値上傾向→業界全体として売上増加傾向とみると辻褄が合うような気がする。

 

規模比較分析

以上、いかがだっただろうか。

2016年6月期は東芝問題が発生したものの、期中に監査人交代するわけにいかないのでその影響はまだそこまで出ていない印象だが、2017年6月期ではその影響がハッキリ出るはずでありそこに注目だ。

ポイントはやはり新日本がどれだけ売上を減らすか、そして新日本から流出したクライアントを獲得した他法人がどれだけ売上を伸ばすか(特にあらた)。

最後に相対的な規模感をわかりやすくするために、新日本を100とした場合の各法人の規模を以下の表に示しておわりとする。

  新日本 トーマツ あずさ あらた
合計人員数 100 103
公認会計士等の数 100 98 97
売上高 100 91 84
営業利益 100 35 43
一人当たり人件費 100 95
会計士一人当たり人件費 100 100 89

 

 

四大監査法人別業績まとめ

新日本有限責任監査法人

人員推移

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
社員※1 637 631 640 627
使用人※1 5,221 5,424 5,644 5,650
(使用人の内、会計士等※2) 3,586 3,944 3,941 3,854
合計人員数 5,588 6,055 6,284 6,277

※1 監査法人について詳しく知らない人のために説明すると、監査法人の従業員は社員と使用人に分けられる。通常会計士として監査法人に入所すると、使用人として一番下の職位であるスタッフから始めることになる。その後年次が上がって評価が良ければスタッフ→シニアスタッフ→マネージャー→シニアマネージャー→パートナーと昇格していくことになる。このゴールであるパートナーという職位になると、晴れて使用人から社員に格上げされる。社員は監査法人の従業員であり出資者(株式会社の株主に相当)でもあり、監査法人においては監査報告書にサインができるのは社員だけである。また、社員の中でも偉くなると一般企業の取締役に相当する仕事も担当することになる。

※2 使用人のうち公認会計士及び公認会計士試験合格者の人数

 

売上推移

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
監査売上 76,355 77,017 77,597 85,024
非監査売上 16,153 19,391 21,578 21,457
売上高合計 92,508 96,409 99,175 106,482

 

段階損益推移

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
業務収入 92,508 96,409 99,175 106,482
営業利益 315 170 227 3,738
経常利益 776 763 1,096 4,130
税前利益 776 763 1,096 1,813
当期純利益 352 284 800 272
  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
営業利益率 0.3% 0.2% 0.2% 3.5%
経常利益率 0.8% 0.8% 1.1% 3.9%
税前利益率 0.8% 0.8% 1.1% 1.7%
当期純利益率 0.4% 0.3% 0.8% 0.3%

 

一人あたり人件費

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
人件費 67,911 70,019 69,798 73,738
一人当たり人件費 ※1 11.6 11.8 11.3 11.7 

会計士等

一人当たり人件費 ※2

15.1 15.4 15.2  16.4

※1 一人当たり人件費は、人件費(新日本は人件費としての開示がないため報酬給与、賞与、退職給付費用、社員退職引当繰入、法定福利費、福利厚生費の合計)を分子、社員数+使用人数の前期末と当期末の平均を分母として算定している。

※2 人件費の中には非会計士がいるので、その分を人件費から除外しないと会計士等一人当たり人件費は意味をなさないが、あずさが会計士等以外の使用人数を出しておらず、総従業員数での比較ができないため、比較のために算出している。分母は社員(特定社員を含む)+会計士及び会計士試験合格者である使用人から算定している。

 

 

有限責任監査法人トーマツ

人員推移

  2013/9期 2014/9期 2015/9期 2016/9期
社員 666 684 573 579
使用人 4,806 5,155 5,597 5,916
(使用人の内、会計士等) 3,568 3,685 3,817 3,813
合計人員数 5,472 5,839 6,170 6,495

 

売上推移

  2013/9期 2014/9期 2015/9期 2016/9期
監査売上 64,580 66,292 66,658 70,459
非監査売上 19,291 20,253 22,519 26,019
売上高合計 83,872 86,546 89,177 96,478

 

段階損益推移

  2013/9期 2014/9期 2015/9期 2016/9期
業務収入 83,872 86,546 89,177 96,478
営業利益 2,678 2,324 814 1,316
経常利益 3,296 2,876 1,954 2,849
税前利益 3,438 2,855 2,737 2,783
当期純利益 1,858 1,340 1,608 1,885
 
  2013/9期 2014/9期 2015/9期 2016/9期
営業利益率 3.2% 2.7% 0.9% 1.4%
経常利益率 3.9% 3.3% 2.2% 3.0%
税前利益率 4.1% 3.3% 3.1% 2.9%
当期純利益率 2.2% 1.5% 1.8% 2.0%

 

一人あたり人件費

  2013/9期 2014/9期 2015/9期 2016/9期
人件費 65,341 66,410 66,960 72,363
一人当たり人件費 12.2 11.7 11.2 11.1

会計士等

一人当たり人件費

15.6 15.4 15.3 16.4

 

 

有限責任あずさ監査法人

人員推移

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
社員 609 607 604 606
使用人
(使用人の内、会計士等) 3,565 3,551 3,642 3,754
合計人員数

※あずさは会計士以外の使用人の情報を開示していないので、全体の人員数は不明である。

 

売上推移

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
監査売上 67,757 67,431 68,101 69,875
非監査売上 12,324 13,303 15,056 20,020
売上高 80,081 80,734 83,157 89,895

 

段階損益推移

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
業務収入 80,081 80,734 83,157 89,895
営業利益 2,072 2,395 1,680 1,595
経常利益 2,200 2,084 1,594 1,212
税前利益 2,174 1,774 3,834 1,212
当期純利益 2,152 695 2,252 714
  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
営業利益率 2.6% 3.0% 2.0% 1.8%
経常利益率 2.7% 2.6% 1.9% 1.3%
税前利益率 2.7% 2.2% 4.6% 1.3%
当期純利益率 2.7% 0.9% 2.7% 0.8%

 

一人あたり人件費

  2013/6期 2014/6期 2015/6期 2016/6期
人件費 58,783 57,291 58,116 63,978
一人当たり人件費 ? ? ? ?

会計士等

一人当たり人件費

13.6 13.8 13.8 14.6

 

PwCあらた監査法人

※PwCあらたは2016年6月期までは有限責任化していないため業績公表がなく、ざっくりした情報がアニュアルレビュー(下記リンク)に載っているのだがなぜかリンクがエラーになってしまうので、参考として去年までの情報を記載している。

http://www.pwc.com/jp/ja/japan-profile/assets/pdf/annualreportpwcaarata-2016.pdf

 

人員推移

  2014/6期 2015/6期 2016/4/1現在
社員 122
使用人 2,374
(使用人の内、会計士等) 1,231
合計人員数 2,219 2,496

 

売上推移

  2013/6期 2014/6期 2015/6期
監査売上
非監査売上
売上高 23,000? 27,605 33,310

 

段階損益推移

  2013/6期 2014/6期 2015/6期
業務収入 23,000? 27,605 33,310
営業利益 2,916 3,935
経常利益 2,880 3,976
税前利益
当期純利益
  2013/6期 2014/6期 2015/6期
営業利益率 10.6% 11.8%
経常利益率 10.4% 11.9%
税前利益率
当期純利益率

 

一人あたり人件費

  2013/6期 2014/6期 2015/6期
人件費
一人当たり人件費

会計士等

一人当たり人件費

 

おわり。

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