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監査法人の選び方ガイド①〜大手と中小・東京と地方・各事業部比較〜

2017/01/08

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こんにちは。公認会計士GTRです。

今回は監査法人の選び方をテーマに記事を書いた。

 

この記事を書いている9月現在、続々と各監査法人の採用イベントが開催されている。

既に就活している人は感じているだろうが、監査法人を選ぶのはけっこう難しい。

どの監査法人もやっていることは結局「監査」「非監査」であり、同じ規模の法人であればクライアントに大きな差もない。グローバルとかクロスファンクションを強調されても同じ四大だと差はわかりにくく一般事業会社に比べてビジネス上の特徴もほぼない。

加えて監査法人の情報は一般企業と比べて少ない。有限責任監査法人であればある程度の情報は公表されているが、有限責任化していない場合情報は不透明だ。給料は初任給がいくらかは聞けてもシニアスタッフ〜マネージャーと昇格していった場合にどのぐらいもらえるかまでは教えてくれない。どの法人も自分の法人の良いところと他の法人の悪いところは言わない。人間関係や組織風土は当たり障りのないポジティブな情報しかもらえない。

ただでさえ論文式試験が終わってあまり準備もしていない状況なのに、このように業界の特性上法人間の差があまりなく、情報の非対称性が大きいため法人選びは苦労する。

 

結局ある程度のイメージとか感覚的な部分に委ねざるを得ない面もあるが、少しでも法人選びの参考になればと思い、監査法人の選び方について私なりの考えを書いてみようと思う。二回に分けて書き、前半の今回は監査法人選びにおいて生じるであろう「こっちとこっちはどっちが良いの?」というポイントについて、比較形式で監査法人や部門のメリット・デメリットについて考えてみる

大きく分けると大手と中小どっちが良いか東京事務所と地方事務所どっちがいいか部門ごとにどのような特徴があるかという三点だ。

次回の後半の回では法人説明会における情報収集のポイントについて書く予定だ。(もしかしたらネタ不足で書けないかもしれない)

 

なお、監査法人かそれ以外かという論点については「キャリア戦略の観点から考える監査法人で得られるもの」について詳細にまとめている。これから就職について考えるという人は是非ともまずそちらの記事を読んでみて欲しい。

そして記事を読む前に一つ注意点がある。今回の記事の情報は具体的な数字以外はほとんど全てが私の主観的なものだ。明確な根拠もないし、私自身が現在監査法人に所属しているため中立性もない。それでもなるべく有用で中立な情報となるようにしているつもりではあるが、念のためご注意頂きたい。

 

 

 

大手監査法人か中小監査法人か

監査法人を選ぶ上では、まず大手(=四大)か中小かに大きく区分できる。中小はさらに準大手と言われるやや規模の大きめのものと、それ以外の(狭義の意味の)中小に分ける場合もある。この記事では中小と書いた場合準大手も含めた広義の意味の中小を指している。

就職にあたっては最初から四大監査法人に絞っている人も多いと思うが、ここでは四大とそれ以外でどんな違いがあるのかについて考えてみたい。

なお、最初に断っておくと、大手監査法人で5年弱働き、私個人の考えは完全に「大手推し」に偏っている。私自身の考えがかなり「大手」に偏っているため、中立性はあまりないと思って欲しい。

 

大手と中小の規模比較

監査法人の規模順位と人数・監査クライアント規模比較表

規模順位 法人名 人員数 人員数
対新日本比
監査関与先数 監査関与先
対新日本比
1位 新日本有限責任監査法人 6,277人 100 3,971社 100
2位 有限責任監査法人トーマツ 6,631人 106 3,574社 90
3位 有限責任あずさ監査法人 5,735人 92 3,402社 86
4位 PwC有限責任監査法人 2,550人 41 ?
5位 太陽有限責任監査法人 383人 6 502社 13
6位 東陽監査法人 392人 6 341社 9
7位 京都監査法人 267人 5 230社 6
8位 優成監査法人 232人 4 約285社 7
9位 仰星監査法人 197人 3 188社 5
10位 三優監査法人 171人 3 約200社 5

※上記表は、各法人のHP上の法人概要(2016/9/3調査時点の情報)から数値を集計したものである。規模順位は原則人数順に並べているが、新日本とトーマツ、太陽と東陽の順位は実質的な規模順に置き直している。
※人数と監査関与先の「対新日本比」とは、新日本の規模を100とした場合の各法人の規模を示したものである。

 

まず最初に、大手や準大手、中小と言ってもどれぐらい規模が違うのかを見てみよう。上記表の通り、四大監査法人の規模が圧倒的に大きく、準大手と言われる太陽〜三優でも大きく規模が劣ることがわかる。これよりしたの中小監査法人になると当然さらに規模は小さくなる。

さらに、一定規模以上の会社でになるとリソース的に大手監査法人しか対応できないため、大企業の監査は大手監査法人に集中する傾向にある。これを示すのが以下の円グラフ(いずれも出典は公認会計士監査審査会公表の「監査事務所の概況(平成28年度版)」)である。なお以下のグラフの「大手」とは四大監査法人を、「準大手」とは冒頭の表の太陽〜三優を、「中小」とはそれ以外の監査法人を示す。

 

上場被監査会社の担当監査法人の内訳

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上場会社のおよそ3/4は大手監査法人が監査を担当していることがわかる。

次に被監査会社の規模も考慮するために時価ベースでのシェアを見てみる。

 

 

上場被監査会社の時価総額ベースでの担当監査法人の内訳

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大企業の監査は大手に集中するため、大手の4つの監査法人だけで時価総額ベースでは9割超のシェアを持っていることがわかる。

では、これらの規模の差が実際にどのような違いになるかを考えてみる。

 

大手と中小の違い 監査クライアント

前述した通り、クライアント数は四大が圧倒的に多く、大企業の監査も四大に集中している。そのため、経験できるクライアントの選択肢は当然四大の方が幅広くなる。

もし大手金融機関、大手商社、大手メーカー等、誰もが知るような日本を代表する大企業に行きたいと思っているのであれば必然的に四大しか選択肢はなくなると思った方がいい。

大企業でなくとも、四大はクライアント数が多いがゆえ単純に選択肢が広い。地方の中小企業を監査したければ四大地方事務所に行けばいいし、ベンチャーを監査したければ四大のIPO担当部門に行けばいい。

四大で監査クライアントの面でデメリットがあるとすれば、四大は部門である程度クライアントの種類を区切っているため、監査できるクライアントの種類がある程度限定されるということはある。例えば、四大に行っても金融部門へ行けばそれ以外の企業を監査できる機会はほぼないし、国際監査部門に行けなければグローバル企業の監査をする機会は減るだろう。国内部門でも最近は業種別に部門を編成しているところもある。

四大監査法人のクライアントの幅が広いと言っても、その全てを経験するというのは中々難しい。結局は自分の選んだ部門の担当するクライアントに限定されるという面はある。

ただ、中小だとそもそも金融機関の監査持ってないとか、グローバルに展開する企業がほとんどいないということもあり、中小なら同時に色んな種類の企業を監査できるかと言えばそういうわけでもない。

 

 

大手と中小の違い 業務経験

業務経験については、大手はクライアント数が多いゆえ積める業務経験も幅広いということが言える。どちらかと言えば大手の方が幅広い業務があるというよりは、一定以上の規模・複雑性の業務は大手でないと経験できないと言った方がいいかもしれない。

監査で言えば、自分の専門性を高めたい業界について一流企業から上場準備会社まで監査ができる。規模の大きい企業になるほど取引も複雑でより高いレベル監査が求められるし、内部統制に関しても業界のトップ企業の内部統制を見ることはものすごく勉強になることが多い。

非監査業務においても、同様に大手監査法人でしか経験できない業務というのはたくさんある。大企業のIFRS導入支援や内部統制構築支援等になるとそれだけで数十〜百人規模のプロジェクトになることもあり、事務所で数百人程度の中小法人では受注が困難なことが多い。

例えば最近の超巨大IPOの事例としてリクルートホールディングスや日本郵政があるが、これらは当然に大手監査法人が監査を行っているが、IPOの過程で別の大手監査法人から内部統制構築等の非監査業務を受けているはずだ。このように、大企業になると大手のどこかが担当し、独立性の観点から受注できない非監査業務は別の大手が受けるといったような状況になり、中小はなかなか出る幕がない。また、大型のM&A等になるとグループ内で監査法人、税理士法人、FAS等が連携出来る大手にしかできない仕事もあるだろう。

非監査業務で言えば何も大企業ばかりが相手ではない。例えばまだ規模の小さいベンチャー起業の株式上場を支援するIPO支援業務では、2015年の実績で三大監査法人で新規上場の8割弱のシェアを占めている(これに関してはあらたは弱い)。中小監査法人だと多いところでも1〜3件で実績がかなり限定的になる。

このように、中小だと難しく大手にしかできない業務はけっこうある。しかし、こうした大規模な案件について面白さを見出せるようになるのはある程度職位が上がってからになるという面もある。大手は良くも悪くも適材適所のチームプレイで仕事をするため、若手のうちは監査しかさせてもらえないとか、非監査においても若手のうちは単純作業しかさせてもらえないという面は当然ある。また、大手では担当する部門がある程度決められているため、やりたい仕事があっても部門の壁があってできないということもある。

 

では一方で中小監査法人ならではの業務経験面のメリットは何か。

中小監査法人は早くから色々な業務を任されるため成長速度が速い・早くから経験できる業務が幅広いとい言われる。中小監査法人は事務所の人数が少なく、監査チームも小規模になる傾向にあるため、若い年次から積極的に仕事が任されるし、1年目からしっかり戦力になってもらわないと事務所としても困る。逆に言えば若いうちから負荷は大きいという面もある。

大手監査法人で大企業の監査チームに入るとなかなか重要な勘定科目が任せてもらえないとか、なかなか主任を経験できないといったこともあるのに対し、中小監査法人では相対的に主任を経験できるまでの期間が短いというようなこともよく言われる。但し、大手でも小規模案件もたくさんあるので、例えば担当する会社のうち半分は大企業でその監査チームの中では下っ端であるが、残り半分は中小企業で主任を担当するというような配置をすることが多く、必ずしも大手の方が成長が遅いということはないように思う。特に最近は大手でも人手不足なので、むしろ早く主任を任せる方向に進んでいる気がする。

また、大手監査法人は入社後各部門への配属が行われ、必ずしも希望通りの部門に行けるわけではない。入りたい部門に配属されればやりたいことが出来るが、入りたい部門に入れなければ部門の壁がありやりたい業務が全くできない可能性もある。例えばIPOがしたいと思って入ったが、配属が金融部門になってしまい、IPOに全く関与できないといったようなことだ。中小監査法人は部門で明確に業種を区分されないことが多いので、比較的柔軟に経験が積めるというメリットもある。

そのほか大手は何をするにも法人としてある程度ルールで縛られている面があるが、中小では比較的柔軟に自分の主張を認めてもらえるという面もある。逆に言うと業務における配置もけっこう属人的とも言える。

 

大手と中小の違い 監査の質

あくまで私の意見だが、監査の質は確実に大手の方が高いと思っている。

新日本の東芝のような件があったので大手でももちろん問題はあるが、やはり大手は監査の品質についてはかなり敏感に対応している。属人的な監査にならないよう遵守すべき事項がマニュアル化されており、それは海外のメンバーファームとも共通であるため、言語面の障害が無ければ海外の系列ファームに言っても違和感なく監査ができる。これは結構すごい。

一方で中小は、中小の中でも差はあるので準大手をそれ以外の中小と一緒にするのは失礼だと思うが、小さい法人になると本当にやばいところはやばい。

私が合格した2011年はかなり就職難な年だったので、大手に入れず中小に行った人も多い。最近大手でも人手不足で過年度合格者採用に力を入れているため、2011年頃に中小に行った人が自分の法人にもけっこう転職して来ているが、そうした人の話を聞くとけっこう悲惨な状況を聞かされる。感覚で行われる監査手続き、リソース不足でとりあえず終わらせるだけの監査、入社したばかりの新人一人で現場に投入し上位者の十分なチェックもない、実質的に機能していない審査制度など。

これについては客観的にどうだということは示せないし、ただの私の偏見とも言える。

ただ、準大手より下の中小に行こうと思っている人は監査の品質面については特に重点的に質問する等、よく注意して欲しい。例えば「若いうちからすぐ主任が出来て経験が積める」という謳い文句は、十分な能力がない人も主任にしないといけない状況にあるということを意味するかもしれない。

なお、大手は大手で監査の品質確保の体制は構築されているが、規模が大きいゆえに本部の意思が末端まできちんと伝わらず、現場のスタッフは思考停止して上から要求された手続きだけをやるといったことは実際あると思う。最近はあれをしなきゃいけない、これをしなきゃいけないという縛りが強く、そうした本部の品質管理要求の対応で現場が疲弊し、言われたことだけやる形骸化した監査手続きになっている場合もあると思う。

 

大手と中小の違い 年収

年収に関してはやはり大手監査法人の方が高い。

詳細は別途まとめているので「公認会計士の年収実態の調査結果総まとめ」の記事を見て頂くと良いが、中小は大手より年収ベースで100〜200万円程度の差があるようだ。

これは基本給の差もあるが、残業代がどの程度もらえるかといった部分も大きいようだ。

大手監査法人では今は基本的に働いた分残業代をチャージできるところが多いと思うが、中小だとそうもいかない面があるらしい。

 

大手と中小の違い 転職価値

転職市場においては同じスペックであれば中小よりも大手監査法人の方が評価は高いように思う。監査業界に詳しくない一般事業会社では四大監査法人は当然知っているし人材の品質になんとなく安心感があるものと思われる。そういう意味で将来転職をするつもりなら四大に行った方が評価が高い可能性がある。

一方で、公認会計士の転職においては監査法人でどのような経験をしたかが評価される。主査(主任)を経験しているか(=チームマネジメント経験があるか)や、監査以外にどんな経験をして来たかが評価のポイントとなる場合もある。先に述べたように中小の方が若いうちから幅広い業務を経験できたり、主任を早く経験できる可能性があり、そういう意味では中小を選ぶという選択肢もありかもしれない。

なお、将来海外で転職しようと思っている場合、四大=BIG4の経験は無茶苦茶評価されるらしい。日本の監査法人の英語表記は、例えば新日本はErnst & Young ShinNihon LLCだし、トーマツはDeloitte Touche Tohmatsu LLCなので、BIG4の日本法人的な認識になる。BIG4は海外で圧倒的なブランドがあるので、転職に有利らしい。

 

大手と中小の違い 人間関係

なんとなく大手は人間関係が希薄で、中小は人間関係が密なイメージがあるかもしれないが、これは考え方による。確かに大手は規模が大きいので法人全体で集まることはほとんど無い。日頃やりとりする人もせいぜい自分の所属部門の範囲内だ。一方で中小は法人全体が大手の一部門程度かそれ以下の規模のため、法人のほとんどの人と交流する機会はあるようだ。ただ、だから人間関係が希薄という事では無い。

例えて言うなら大手は大学、中小は中学といったイメージか。中学は学校の人は大体知り合いだけど、大学はせいぜいゼミとかサークルの範囲。だけど中学の友達と仲が良くて大学の友達と仲が悪いということは無いはずだ。

また、中小は準大手と言われる業界5位〜10位でも150〜400人程度の規模であり、これは大手監査法人の1部門かそれ以下の規模である。従って、中小における一般職員と代表社員の距離というのは、大手における一般職員と部門長ぐらいの距離に相当する。重要な決定権を持つ法人の経営層にも比較的意見を主張する機会が多い。逆に大手監査法人だと日常で代表社員と話す機会はほとんどなく、若手の意見は上に上がりにくい。

 

 

 

東京事務所か地方事務所か

四大監査法人になると地方各地に事務所があるが、採用は各事務所ごとに行われる。従って本社で一括採用し、地方に配属するということはなく、東京事務所で採用されれば東京事務所勤務、大阪事務所で採用されれば大阪事務所勤務というように採用時の入り口で自分の勤務地が決まる。

基本的には転勤はない。但しマネージャー以上になると数年地方事務所で経験を積ませるといったこともある。また、地方事務所の所長は東京事務所から派遣されることも少なくない。また、本人が希望して認められれば地方事務所へ異動することも可能。

そのため、法人選びと同じぐらい東京・地方の事務所選びも大事になる。

それでは東京か地方か、事務所を選ぶ上での違いについて見ていこう。

 

東京事務所と地方事務所の規模比較

   東京  大阪  福岡  名古屋  その他  合計 東京比率
※2
事務所数
※3
新日本 4,948 618 137 88 493 6,284 78.7% 33
トーマツ 4,052 710 230 395 783 6,170 65.7% 30
あずさ ※1 2,777 762 46 260 401 4,246 65.4% 12

※1 あずさは公認会計士等以外の職員情報がなかったため社員+公認会計士等職員。
※2 総従業員数に占める東京事務所の割合
※3 事務所数として公表されている数
※4 人員数のデータはそれぞれの法人の直近の「業務及び財産の状況に関する説明書類」の数値。

 

まずは規模比較をするために事務所の従業員規模を見てみると、法人によって多少の特徴があることがわかる。新日本は東京事務所にリソースが集中しており地方事務所の人員数が少ない。トーマツは新日本と比べると地方事務所の人員数が多い。あずさは三大の中でも大阪の人員数割合が18.0%と高い。

こうした法人ごとの特徴はあるものの、全てに共通しているのは東京が圧倒的規模を誇っているということ。No2の大阪事務所でも東京事務所の12%〜27%程度の規模しかない。

ではこうした規模の差がどのような違いにつながるかを考えてみる。

 

東京と地方の違い 監査クライアント

これは大手と中小の比較と似てくるが、やはり監査クライアントは規模の大きい東京事務所に集中している。というよりは、日本の企業の多くは東京に本社を置いているため必然的に東京事務所が大きくなったという方が正確だろう。

従って当然東京事務所の方がクライアントの幅は広くなる。特に大企業は東京に集中している。もちろん小さな規模の企業やIPOクライアント等も多い。また、以外と地方のクライアントでも東京事務所で監査を行っている場合は少なくない。ある程度の規模になると地方じゃリソース不足で東京事務所に回ってくることもある。

また、金融事業部やIPO担当部署といった専門部隊も基本的には東京事務所に設置される(地方にも拠点は設けられるがあくまでメインは東京である)ため、こうした部門に行き専門性を高めたいのであれば必然的に東京事務所を選ぶことになる。

では地方事務所でしかできない業務は何かというと・・・実はあまりないような気がする。東京事務所で地方の案件がないかというと、普通にある。法人にもよるが東京事務所と地方事務所の管轄というは別に明確に区分されていない。地方の企業であっても、規模が大きいから東京でやるとか、東京事務所のパートナーが契約取ってきたから東京でやるとか、先方の希望により東京でやるとか、そういうこともけっこうあるので、地方の仕事もけっこうある。

 

東京と地方の違い 業務経験

業務経験については大手と中小の比較とけっこう似てくる。

規模の大きい業務、専門性の高い業務というのは必然的に東京事務所に集中しやすい。地方で受注した案件も、地方事務所だけでは対応が難しいから東京事務所主導になったりすることもある。なんとなく、刑事ドラマで殺人事件が起きると本庁の刑事が来ておいしいところ持って行って、所轄の刑事が文句を言う、あれに似ているなと思うことがある。

従ってそういった大規模な業務、複雑で専門性の高い業務の経験が積みたいなと思えば東京事務所の方がメリットは多いかもしれない。

一方、地方事務所は相対的に規模が小さいことが多いので、中小法人のように若手のうちから色々な業務を経験できるといった面がある。スタッフの若い年次から営業に連れて行ってもらったりという話も聞く。東京事務所のように部門の隔たりというものもないので、自分の所属する事務所の仕事であれば強く希望することでなんでもやらせてもらえる可能性がある。

 

東京と地方の違い 年収

基本的な給与テーブルは東京と地方で差はないが、法人によっては首都圏の事務所は特別な手当が含まれている場合がある。そのため法人によっては月収で1〜3万程度の差が出ることはある。年収で見れば最大40万円弱の差だ。ただ地方の方が家賃等が安いので、首都圏の事務所よりお金は貯まるかもしれない。

 

東京と地方の違い 転職価値

これについては転職価値という面では差はない。

ただ転職市場の求人も当然首都圏の方が数は多い。将来首都圏で転職しようと思っているのであれば、地方にいると転職活動が大変だということは一応覚えておいた方がいい。

 

東京と地方の違い 社内出世

出世に関しては東京事務所の方が有利な面は多いと思う。やはり東京事務所がメインストリーム。

パートナーの評価は持っている監査クライアントの業務収益や営業の契約高等になってくるので、仕事が多く規模も大きい東京が必然的に有利になる。

また、地方事務所の所長はけっこう東京事務所のパートナーが派遣されてくることが多い。

将来パートナーとして経営層を目指すのであれば東京事務所の方が有利だと個人的には思う。

 

東京と地方の違い 人間関係

これは基本的に東京事務所より地方事務所の方が人間関係は密になりやすい。それゆえに地方は人間関係が良好であればとても働きやすいが、嫌いな人がいるとしんどいかもしれない。

東京事務所は監査チームごとにメンバーが違うので同じ人とずーっと一緒ということは多くない。そのため好きな人も嫌いな人もある程度一緒に仕事をしたら次の四半期が来るまで合わないということもあり、良くも悪くも適度な距離感がある。本当に苦手な上司についてはその人のチームから外してもらうように要求することもできる。一部門数百人いるから、人間関係での悩みはその対象の人と距離のある別の人に相談するといったこともしやすい。

一方地方事務所は数十人規模のところも多く、事務所の規模としては中小法人より小さくなることもある。人数が少ないゆえに常に同じ人と一緒になることもあり、規模が小さいゆえに嫌な人がいてもなかなかチームを外れにくい。人間関係が密すぎて上司に関する悩みを相談できる適切な距離感がある人がいないといったこともあるかもしれない。

従って地方事務所の方が運に左右される部分が大きい気がする。ただ私の周りの地方事務所の人は基本的にみんだで和気藹々と楽しそうに仕事している人が多い。

 

 

どの部門を選ぶべきか

どの部門を選ぶかというのは、ある意味でどの法人を選ぶかよりも重要になる。

 

 

国内監査部門

最も無難な部門と言えるだろう。ある意味王道。日本国内の超大企業から中小企業までを幅広く扱う。国内監査部門と言っても、一定規模以上の規模の会社であれば今の時代ほとんど海外進出しているので、英語を扱う機会が全然ないわけではない。

通常は国内部門の中にさらに国内一部、国内二部といった区分がされており、この区分は業界やマーケットごとの分類であったり、監査法人が合併を繰り返す過程で旧○○監査法人系が一部、旧○○会計事務所系が二部といった分類となっていたり、法人によって扱いは異なる。

また、国内と国際を明確に分けておらず、単純に一部、二部、三部という分け方をしており、一部の中で国内担当と国際担当というような区分けをしている法人もある。うちの法人は国内と海外どっちも経験できますよーというのを謳い文句にしているところもあるが、同じ部門でも一部一斑、二班というように中で区分されており、その班ごとに国内・国際がある程度分かれているだけだったりする。結局国際班に行けなければただの国内と変わらなかったり。

特徴がないのが特徴で、国内監査だと何ができるかと言われれば、他の部署でしか出来ないこと以外は全部できますよという感じだ。スペシャリストよりはジェネラリストという人や、まだ自分の方向性を絞りたくない人にはオススメかもしれない。

ある意味幅広く色々できるが、差別化はしにくいので、何も考えずボーとしてると監査法人に残るにしろ転職するにしろ「結局君強みって何なの?」という状態に陥りやすい点は注意。

 

国際監査部門

グローバル企業を担当するのが国際監査部門。海外企業の日本支社や、海外上場していて米国基準・IFRS導入している企業などを担当する。英語を使って、海外のメンバーファームとやりとりして、国際派会計士って感じで何となくかっこいいと人気の部署。

国内監査部門の箇所でも書いたが、部門の区分場では国内監査と明確に分かれていないところもあるが、いわゆる「国際部門」に相当する部署はどの法人にもある。

業務面では当然仕事で英語を使う機会が増えるし、米国基準やIFRSに接することになるため、自分に明確な強みをつけることができる。英語はどう考えてもこれからも重要性は増し続ける。パートナー昇格の条件にTOEICの点数が設けられる日はわりとすぐ来るかもしれない。IFRSも本格的な全面導入が行われる気配はないが、自主的に導入する企業は着実に増えており、IFRSに精通した人材の需要は間違いなく高まる。

監査法人に残り続けるにしろ、転職するにしろ、国際監査で得られる経験はプラスに働くと思われる。

一方で、やはり仕事で英語を使う機会が増えるので英語ができないと日々のストレスが大きい部署だとも言える。仕事内容も、外国企業の子会社監査だと海外ファームからの指示に従うだけで案外つまらないといった話も聞く。

また、「英語を活かしたい」と考える人にとっては国際監査部門が必ずしも良い選択肢とは限らない。良くも悪くも国際監査部門では英語ができる人が多い為、単に英語ができることはそれほど周りとの差別化につながらない。国際監査部門を希望する人は、将来的に海外駐在等も視野に入れている人が多いと思うが、駐在の募集枠は部門ごとに決まっていたりする(法人による)ので、国際監査部門から駐在を目指す場合ライバルは英語もできる同じ国際監査部門の人で希望者も多いためなかなか大変といった面もある。

この点あえて国際監査を避ければ、英語できる人が少ないため英語ができること自体が武器になる。国際監査以外の部署では常に英語人材が不足しているので、多少英語ができる人には海外案件が集中的に回ってくる。そこでしっかり仕事をすれば駐在などにおいても部門の推薦を得やすく、結果的に海外に行きやすいかもしれない。今の時代どんな企業も当然のように海外進出しているので、どこの部署に行っても英語を活かす場所はある(パブリックは例外かも)。単に英語を活かしたいなら、あえてレッドオーシャンの国際監査を避け、ブルーオーシャンの国内監査などに入るというのも戦略としてはありだと思う。

 

金融部門

金融部門は最も専門性の高い部門の一つである。

対象となるのは銀行、証券会社、保険会社、リース会社などの金融機関。

金融機関は規模が大きいところが多く、通常の一般事業会社の監査とは勝手が異なる部分が多々あるため、専門部隊として金融部門が設置されている。

金融部門の中で人気配属先はやはりメガバンク。売上も数兆円となり、取引も複雑なため監査法人内で最大規模の巨大チームが結成される。その規模はメガバンク監査チームだけで中小監査法人を作れてしまうほどの規模。監査チームの中にさらに勘定科目ごとや監査手続きごとに小規模チームが作られる。

三大監査法人の報酬額トップはだいたいメガバンクだ。例えば日本の銀行業界一位の三菱UFJフィナンシャルグループの2016年3月期の監査・非監査報酬の合計(連結ベース)は51億8千万円(ぶっちぎりの一位)で、これはトーマツの売上891億の5.8%に相当する。三大監査法人にとって最重要監査クライアントはメガバンクである。ちなみに三菱UFJがトーマツ、あずさが新日本、三井住友が新日本の担当である。

銀行以外にも基本的に規模の大きいクライアントが多く、監査チームも大規模になることが多い。メガバンクチームはほとんど1年中担当メガバンクに常駐するような状況。チームがデカイため任される仕事は断片的なものが多く、なかなか会社の全体像を掴めない。新人は確認状の回収作業やコピー等だけで期末が終わってしまうことも。

クライアントが日本最大級の会社であり超優秀な人達なので、監査チームも当然に高いレベルの仕事が求められる。不手際で契約が切られるようなことがあればパートナーの首がとぶだろう。

良くも悪くも専門性が高い部門なので、金融機関以外のことが全くわからなかったりする。棚卸立会なんてしたことないという人や、四半期レビューってなんだっけという人もいる。一度金融畑に足を入れると知識・経験がそれ専用になることから安易な気持ちで選択しない方がいい部門である。

転職市場においても一般企業については何もわからないという状態なので不利な面もある。逆に将来金融機関に入りたいならその経験は高く評価されるとか。

 

公会計・パブリックセクター部門

公会計・パブリックセクター部門も特殊な部門だ。

クライアントは地方自治体や独立行政法人等。これらの団体は会計基準自体が通常の企業とは異なる。金融部門と同じく特殊な経験・知識が付くため、専門性は高まる。公会計は独自のルールがありけっこう面白い。同じ法人でも一般会計と特別会計で財務諸表が分かれてたり。専門性が高いゆえに一般企業の監査をやる機会はなくなるので、一般企業へ転職する場合には不利になるかもしれない。

公会計・パブリックセクターを選択する人は比較的監査法人にずっといるつもりの人が多い気がする。また、経験を積んで成長したいというよりは、地域のため日本のために貢献したいといった志が高い人が集まるような気がする。

将来性という意味でいうと、公会計は行政機関で未だに単式簿記を使っている、発生主義ではなく現金主義で会計している等、課題が多い領域だ。最近だと農協の監査権をJA全中から切り離し、公認会計士監査を義務付けるなどの改革が話題になった。農協に限らず今後もこうした改革が行われる可能性は大いにある。究極にドメスティックな領域ながら、潜在的な市場の大きい領域とも言われる。

また公会計・パブリックセクターは他の部門よりも忙しくない・精神的に楽と言われることがある。その理由は幾つかある。例えば自治体や行政法人はきっちり定時に帰宅するところも多く、そもそもあまり残業できないというところもけっこうある。また、国民の税金を預かって運営しているためクライアントの「きちんとやらなきゃいけない」という意識が強い。一般企業だと誤った処理を指摘しても「このぐらいどうでも良くないですか?」とか「今更直すなんて無理ですよ」と拒否されることも少なくないが、自治体や行政法人は金額の大小に関わらず正しく開示しようと考える人が多い。また、利益を獲得しなければならないというプレッシャーもないため不正リスクが低い。また四半期レビューがないため繁忙期を除くと比較的ゆとりがあるという話も聞く。

 

IPO部門

成長するベンチャー企業の株式上場を支援する部門がIPO部門だ。

IPO業務は具体的に何をするかと言えば、基本的なところは監査と同じだ。上場審査の基準では一定以上の成長性や将来性が求められるため、上場前から監査法人が監査をし、その財務諸表をもとに上場審査が行われる。また、成長性だけでなく適切な管理体制の有無や、コーポレートガバナンスの構築なども必要になる。

IPO部門は上場を目指す会社に行き、上場のために改善しなければいけない課題を洗い出し、監査を通じてその改善状況を評価する。こうしたIPOを目指す成長企業はまだ最初は管理体制が十分ではなく、場合によっては発生主義ではなく現金主義で処理をしていたり、会計を税務ベースでやっているといったところも少なくない。

そのためIPOの過程では助言・指導機能の発揮が強く求められる。会社から常に頼りにされるので、通常の監査よりも自分が価値を提供できていると感じやすく、やりがいはあると言われる。その一方で、会社はわからないことは何でも監査法人に聞いてくるし、依頼した資料が全然出てこないし、監査をしていても間違いだらけで上場企業監査とはまた違った大変さがある。

あくまで助言・指導という範囲ではあるが、会計の適正化や0からの内部統制構築などに関わることで得られる経験も多い。上場前の会社は一部を除いて規模も小さいのでIPOチームは少人数で組織されることが多く、中小監査法人で言われるような「若手の成長スピードが速い」部門と言えるかもしれない。

ここ数年IPOの数も増加傾向にあり、facebookやlineといった振興ベンチャーが短期間に爆発的に成長するといった例もあり、ちょっとしたIPOバブルな状況だ。IPOを目指す企業はどこも管理部門人材の確保に苦心しているため、IPOを経験した会計士の需要はかなり大きい。IPO部門に入るとベンチャー界隈の人脈も構築できるため、将来そういう企業へ転職を考えている人にはオススメの部門だ。

一方で、IPOの多くは報酬額がかなり安い。将来その企業が成長し規模が大きくなれば監査報酬も増えるため、将来への投資という意味合いが強く、短期的に見ればIPO業務の採算はかなり悪いことも多い。そのため、監査法人内での出世を目指すなら王道とは言えない部分がある。IPOを何社も受注してたくさん実績を作るよりも、大企業の監査契約を他から引き抜いた方が全然収益貢献度は大きかったりするので、業務収益で評価されるパートナーにとっては不利な環境という面もある。

 

アドバイザリー部門

監査法人にあって監査をやらず非監査をメインでやるのがアドバイザリー部門。

この部門は監査法人の中でも特殊な位置付けで、監査法人の一部門であるものの、やっていることはコンサルやFASに近い。BIG4だとグループ内でコンサルやFASやアドバイザリーの会社が別にあるので、そことの違いが曖昧な部分がある。

アドバイザリー部門においても、監査法人の中にあるのでやるのは基本的に会計知識や監査での経験を生かした業務になる。そのため、前提としてある程度監査経験が必要と考える法人もあり、新人はあまり撮らないことも多い。

アドバイザリー部門の魅力はやはり多種多様なアドバイザリー業務を経験できる点にある。監査は基本的に毎年毎四半期同じ作業の繰り返しで、契約は継続されるのが基本なので、安定はしているが変化は少ない業務だ。一方でアドバイザリーは同じ仕事というのない。契約の受注も自分達の交渉次第だし、契約ごとにクライアントの要求する成果物を提出する必要があり、監査よりシビアな面は多々あるが、その分も成長するための経験はたくさん得られる。

転職においてもアドバイザリー業務の経験はかなり評価されやすい。監査法人にいると「監査しかできない」と思われることも多いので、非監査の経験というのを職務経歴書に書けるかどうかはけっこう大きかったりする。会計士受験生も将来はコンサル・アドバイザリーがやりたいという人は多いし、それは監査法人内の会計士でも同じである。そのためけっこうな人気部署で法人内でアドバイザリーに異動を希望する人もけっこういる。

その分仕事はハードで厳しい傾向にある。スケジュールの決まっている監査と異なり、アドバイザリーではいきなり仕事が発生することも少なくない。契約を取るため急遽提案書を作成しなければならず徹夜続きといったこともあり得る。志望するならしっかり覚悟を決める必要があるかもしれない。

実力がつく・転職時に評価されるという面はあるが、監査法人内での出世を考えると若干微妙な面もある。やはり監査法人は監査をやるところなので、監査をやらないアドバイザリーはメインストリームにはなりえない。グループ内に別途コンサルやアドバイザリーがあるBIG4ではその位置付けが中途半端な面もあり、それなら最初からコンサルやFASを選べば?という気がしないでもない。

 

 

監査法人ごとの違い

四大監査法人ごとの違いについては別途以下の記事にて整理しているのでそちらを見て頂きたい。出来れば近々第3回の比較記事も公開したいと思っている。中小の比較も書きたいところではあるが、申し訳ないが私の情報網ではなかなか情報が入手できないので断念する。

 

 

 

おわりに

色々書いてきたが、最後に一つ確認しておきたいと思う。

冒頭でも書いたが、ここに書いた内容はあくまで私の主観であり、偏見にすぎない情報も多分に含まれている。所詮私なんて監査法人に入って5年の若手であり、自分の法人や自分の部署ですらその魅力や欠点を全て把握できているとは思えない。それなのに他法人と比較して何が良い悪いと言っても、信ぴょう性は高くないだろうと自分でも思っている。

そのため、現場の会計士の一意見として捉えて頂けたらと思う。

ただ、これは法人説明会でも同じことだ。若手リクルーターだって他の法人の実態をきちんと把握していないのだから、他法人と比較して明確に自分の法人が良いと思えるはずがない。マネージャー以上のベテランであれば、当然自分の法人に愛着が湧いているし、そもそも採用イベントはいかに自分の法人に人を呼び込むかが勝負なので、中立な情報が得られるはずもない。

従って、あらゆる情報は鵜呑みにせず、色々な話を聞いて総合的に判断することが大事だと思う。

このブログの記事の内容も鵜呑みにせず「あのブログでこんなデメリットがあるって言ってたけど本当かな?」という疑問を、実際に採用イベントのフリーディスカッションなどで聞いてみるのが良いだろう。

監査法人の採用イベントはまだまだ続くので、採用イベント情報はこちらの記事に網羅的にまとめてあるので参考にしていただければと思う。

 

 

結局最後に決めるのは自分しかいないわけなので、しっかり情報収集し、自分の頭で考え、後悔のない決断をして欲しい。

 

 

-監査法人・監査法人就活


 comment
  1. ヘルマン より:

    いつも有用な記事をありがとうございます。とても参考になります。
    ひとつ疑問があるのですが、先日トーマツの全体説明会に参加した際、ブースの一つとしてIT監査というものがありました。
    私はその説明会にて他に回りたいブースがあったためIT監査ブースの話は聞けなかったのですが、ビックデータを用いた監査が将来ウンヌンという話を全体講演をされた監査担当のパートナーの方が語っておられましたので、おそらくは今後重要性を増すものなのだろうなという漠然とした認識があります。
    また、最近情報系の国家資格として『システム監査技術者』という資格を耳にします。具体的には、会計士の書いた書物を読むと著者の資格経歴として『公認会計士』と共に『システム監査技術者』の資格を保有されていることが多い気がします。そのため、会計士とシステム監査技術者とは仕事をするうえで有用性が高いのかな?という認識があります。

    そこで教えていただきたいのですが、
    ・GTR先輩がITに関してどのような認識をお持ちなのか。
    ・キャリアにおいてITはどの程度考慮すべきものであるのか。
    といったことをぜひお聞きしたいと思います。

    お忙しいとは思いますが、お答えいただけたらうれしいです。

  2. GTR より:

    ヘルマンさん

    コメントありがとうございます。
    ITは、間違いなくこれからも重要度の高い領域です。本当は既に超超超重要な領域ですが、まだまだ監査法人がそれに対応出来る十分なリソースを持っていない状況です。そして、私自身が知識が全然足りないので、この領域は書きたくてもあまりちゃんと書けないので記事にはしていません。なので、参考程度にして頂ければと思います。後半はほとんど妄想です。

    まずITと言うと幅広すぎて曖昧ですが、会社の内部統制の中の要素であるITを徹底的に検証するといった「会社のIT」の話と、監査法人がビッグデータやアナリティクスを使った監査を取り入れているといった「監査側のIT」の話があるように思います。
    「会社のIT」の話は試験でも扱いますし、内部統制の構成要素として、監査において検証が不可避の領域です。しかし、会計士はITに関する知識がけっこう不足しているので、法人内のIT部隊に任せる形になります。しかし本来は会社のITを自らが本質的に理解しないと有効な監査は難しいと思います。IT部隊に任せきりではなく、監査チームで自らITを検証できるのが理想だとは思いますが、それは現状なかなか難しく、この後も大きくは変わらないと思います。

    「監査側のiT」の話は、どこどこの監査法人がビッグデータを活用した監査を開始とか、アナリティクスを監査に活用とか、最近新聞でも頻繁に話題を目にします。既に色々試行錯誤していますが、これから本当にこうしたデータを活用した監査の時代が本格的に来ると思います。
    特に個人的にビッグデータは監査との相性がとてつもなく良い分野だと思います。監査法人のBIG4になるとクライアント数が膨大になりますし、監査は継続が基本なので、そうしたクライアントと何年も関わることになります。しかもそれぞれ世界中のBIG4とつながっているので、その量は本当にものすごく、まさしくビッグデータと呼ぶにふさわしいです。
    ただこのビッグデータがあっても、現時点では監査法人はこれを使いこなせていません。このビッグデータを本格的に利用すれば企業が不正をしているとすぐにわかる時代が来ると思っています。既に技術的には可能だと思います。例えばweb広告の領域ではビッグデータを活用し「ネット上での行動履歴からその人の探しているものを導き最適化した広告を表示する」ということが当然のように行われています。googleやamazon等のIT企業であれば、おそらく超ハイスペック監査ツールを今すぐにでも開発できるんじゃないかと個人的には思っています。

    さて、そんなわけで監査におけるITの重要性はますます高まると思いますが、ちょっと話が広がりすぎましたので、じゃあ今後ITができるかできないかでキャリアにどんな影響があるか、もう少し具体的な話をしてみます。
    今後ITの重要性が上がるにつれて、公認会計士もよりITを理解することが求められると思いますが、しかしだからと言って必ずしもITができる公認会計士がキャリアにおいてプラスになるかと言うと、そうではない気がします。なぜならITという領域は当然ながら公認会計士よりもITに詳しいエンジニア・プログラマといった専門家がいます。しかもそういう人たちは公認会計士よりは給料が安かったりします。なので、監査法人としては法人内の公認会計士をITに対応できるように育てるよりも、公認会計士とは別にITを専門とするプログラマー等の専門家を採用する方が現実的な気もします。なのでITを使いこなせる公認会計士よりも、ITを使いこなせる専門家を使いこなせる公認会計士の方が評価されるんじゃないかと思います。

    そのため、ITの重要性はどんどん上がり、ITができることは差別化にはつながるけど、その活用方向をしっかり考えないと「使われる側」になってしまい、そこまで自分の価値を高められないという問題はありそうです。
    実際、法人内でITが出来る会計士が特別評価されるかというと、そうでもない気がします。その理由の一つに、その人がITにおいてどれぐらい優秀なのかが、ITがわからないお偉いさんからしたらよく分からない。だから正しく評価もできないという面があると思います。実際僕らも「ITはとりあえずあの人に聞けばいい」という人はいるのですが「この人がどれぐらいすごいのか」というのはよく分からなかったりします。これが英語ならペラペラ喋れてるだけで「こいつは超優秀だ」と思うのに。

    なので、短期的にはITができることが必ずしも正当な評価に繋がらない可能性があると思います。IT能力を正しく図る体制が整っていないので。

    中長期的にはITができることが超重要になるとは思いますが、そうすると今度は海外の優秀なIT人材や高性能なAIというライバルが問題になります。

    例えばアメリカでは既に情報量の多いデータの分析を単価の安いインド等に投げて、公認会計士はインドからの分析結果を受け取り、その分析結果を見ながら考えるということをしています。インドはアメリカ人よりも安い給料なのに超優秀だったりして、ITでそこと戦っても勝ち目はないと思いますが、それを使う側に回ればこれを競争相手ではなく自分の手段として使えます。

    このように、ITを使えるというのは世界中にハイレベルなライバルがいるので、日本もそのうち面倒なITの分析は海外に投げて、自分たちはより考える作業に時間を割くという流れになるような気もします。既に日本でも海外に作業を投げるということは行われていますが、現時点では言語の壁があってまだまだ日本は気軽に海外を活用できないという状況ですが、将来的にはアメリカに近くなっていくのかなと思います。それなら世界中のIT人材を活用できる語学力の方が必要と言えるかもしれません。

    そしてさらに先を見れば、優秀なAIが全てをオートで分析し、公認会計士も仕事を奪われていく時代は確実に来るだろうなと思います。まあそこまで先を考えても、じゃあどうすればいいのという答えもないしあまり意味ないんですが。ただもしかしたら思ったより遠くない将来にそうなるんじゃないかという気もします。

    そんなわけで公認会計士が中途半端にITに手を出してもあまり付加価値はないような気がします。本当に重宝されるのは、ITについても本質的に理解、監査・会計の知識とITの知識を一体として監査ができる人。そこまで行けば価値は相当高いと思います。ただ評価されるかは置いておいて、ITを知ればより深い監査ができるようになるのは間違いないです。

    長くなりましたが、以上です。

    • ヘルマン より:

      いつも貴重な変身をありがとうございます。
      とても役に立ちました。
      これも踏まえて法人説明会等で質問等をしてみたいと思います。
      どうもありがとうございました。

  3. ウォルターホワイト より:

    GTRさん

    こんばんは。
    いつもブログを興味深く時に楽しく勉強になると感じながら拝見しております。
    私は、今年の論文式試験を受けて結果待ちの者です。

    合格した場合には、大手監査法人に行くことを考えています。
    部門としては、IPOや国際、一般等幅広く興味があります。(金融、パブリックは興味ありません)
    私は、会計士試験の勉強を一度諦めて一般企業に就職していた時期があるため、年齢も30歳と監査法人に新人で入りたい者としては比較的高齢です。
    そのためやりたい分野とは別に、なるべく忙しく早くから成長できる部門で働けることも重視したいと考えております。

    監査法人によって、上記は異なる点や本人の能力次第でアサインや任される業務量が異なることは理解しておりますが、GTRさんのお分かりになる範囲でなるべく忙しく早くから様々な業務に携われる部門をおしえていただけましたら幸いです。

    長文乱文失礼いたしました。
    よろしくお願いいたします。

  4. GTR より:

    ウォルターホワイトさん

    こんばんは。コメントありがとうございます。
    私の法人だったら、という話になってしまいますが、回答させて頂きます。
    個人的には、早いうちから色々経験できる、短期的に成長スピードが早い、主任が早くできるという点では、やはりIPO部門が強いかなというイメージはあります。
    この記事でも書きましたが、IPOジョブはチームが小さいので若いうちから色んな科目を任せれますし、主任も比較的早く経験出来ます。
    国内部門でも同じようなジョブはいくらでもありますが、国内部門ではそういうジョブに当たるかは運の要素が強いのに対し、IPO部門はほぼみんなそういうジョブに関与するので、よりIPO部門の方がそういうジョブへのアサイン機会が増えます。
    国際部門は法人にもよりますが比較的ジョブの規模は大きめな気がします。
    なので、単純に短期的な成長という意味ではIPOを推します。
    IPOジョブはなかなか予定通り進まないという意味で忙しい気はしますが、勢いのあるIPOクライアントは活気もありますし、クライアントに貢献出来る機会が多いので、IPO部門は部門として活気があり他の部門と比較して仕事における満足度・モチベーションま高い印象を受けます。

    ただ、30歳ということで、おそらく経験を積んで転職というよりは、法人に居続ける可能性も考えているのかなと勝手に思います。(違ったらすいません)
    法人に居続けるのであれば、IPO部門は必ずしもおすすめできないかもしれません。IPO部門といってもその位置付けは法人にやって異なりますので、一概には言えませんが、やはりIPO部門はメインストリームではありません。ジョブの採算も悪く、IPO部門なんて法人の利益に貢献してないじゃないかと考える人もいます。
    また、今はIPOブームと言っても良い波が来てますが、IPOの数は時代によって変動するので、ある意味法人内ではポジションが不安定な部署と言える気がします。将来パートナーを目指す方向であれば、IPO部門は必ずしもおすすめはできないかなーとい思います。

    法人内でパートナーを目指す方向であれば、国内か国際の方がおすすめかもしれません。国内と国際は短期的な成長は相対的に遅いかもしれません。大きいクライアントばかりだと主任を経験するのも遅くなります。しかし、ビッククライアントチームはどの法人も重視して優秀な人材を配置するので、優秀な上司の元で監査を学べるという意味で長期的にはIPO部門より成長できる可能性もあります。人数が多いチームを指揮するので小規模チームよりマネジメント経験はつくと思いますし、大企業になるとそれだけ様々な会計論点、先進的な会計論点に触れる機会もあります。
    なので、パートナーを目指すのであれば国内か国際を推します。

    国内と国際のどちらがいいかは、趣味の問題ですね。国際の方が将来的な人材価値は高まる可能性もありますが、英語が得意でなければそれだけでスタートから不利な状態にもなりえるので、英語が出来ないのであれば出世という意味では不利かもしれません。逆にその環境で自分を追い込んで鍛えるのもありかもしれません。

    なので私個人の見解として結論を言うと、

    ・辞める前提であればIPO部門
    ・監査法人でパートナーを目指すなら国内か国際の好きな方

    ということになります。

  5. ただの経理マン より:

    GTR 様
    初めまして。毎回、高い分析力と考察力に基づく記事、興味深く拝見させて頂いております。
    現在、大手不動産仲介会社(非上場)の財務部に勤務しております29歳(男)です。現在、論文合格発表待ちの状態です。
    GTR先輩に質問があります。
    私は、合格後大手監査法人勤務を希望しておりますが、今後の会計士としてのキャリア形成に当たって自分の軸を絞り込めないでいます。

    ひとつは、まず国内監査部門、もしくは国際監査部門で幅広い業務を経験し、海外赴任などを経てパートナーを目指すというキャリアです。経済面等で比較的安定した環境の元で、家族(最近娘が産まれました)との時間を大事にしたい、経済面とプライベートを優先させたいという軸です。

    もうひとつは、IPO部門で、自分の成長を早め、企業内部の目線、経営者の視点を体感し、IPO業務を通じて人脈を作り、将来的に独立を目指す、(その場合は同グループの税理士法人への転籍も視野に入れる)もしくは、ベンチャーに転職し、経営者とともに会社を大きくする。直に誰かの役に立つ実感を味わうことで、自分の社会における価値を見出したいといった考えです。これは自分自身の理想を追求する軸です。

    前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、ここで、3つ質問があります。

    ①今後のキャリアプランが途中で変わった時、例えば、入所5年目程度のシニアスタッフが部門を移動したいと申し出た場合、もちろん能力、経験、年数、タイミング等、様々な要素があるとは思いますが、どれ程の確率で希望が通るものなのでしょうか。
    ②また例えば税理士法人に転籍を希望した場合についてもできれば伺いたいと思います。
    ③さらに、その際年齢が高いことが不利になることはあるのでしょうか。

    長くなって申し訳ありません。ご回答頂けると幸いです。よろしくお願いします。

  6. GTR より:

    ただの経理マンさん

    コメントありがとうございます。
    あくまでうちの法人は、という話になりますが回答させて頂きます。

    >①今後のキャリアプランが途中で変わった時、例えば、入所5年目程度のシニアスタッフが部門を移動したいと申し出た場合、もちろん能力、経験、年数、タイミング等、様々な要素があるとは思いますが、どれ程の確率で希望が通るものなのでしょうか。

    具体的な確率というのは難しいですが、しっかり主張すれば希望が通る可能性はけっこう高いかなと思っています。私の法人だとしっかり自己主張すれば、法人はかなりちゃんとそれに答えてくれます。
    ただ、もちろん希望すれば何でも認めてくれるというわけではありません。「なぜ部門異動しなくてはならないのか」ということを明確に説明する必要はあると思います。
    それと、今の部門内できちんと仕事をして認めてられることは大事だと思います。自分の周りにも全然仕事出来ない半人前なのにいっちょまえにやりたいことだけ主張する人はいますが、こういう人は異動希望とか認められないですね。まずは与えられた仕事をきちんとこなして評価されることがすごく大事だと思います。
    それから、希望してから実際異動が認めれれるまでは1〜3年程度かかる可能性が高いです。

    >②また例えば税理士法人に転籍を希望した場合についてもできれば伺いたいと思います。

    これも、きちんと主張すれば認められる可能性は高いと思います。しかし、監査法人としては単に人が抜けるだけなので、ハードルは高いかもしれません。これについてもとにかく主張することと、その理由を明確化することが大事です。
    「自分は将来独立して税務がやりたいから、将来は絶対に税理士法人に移りたいと考えている。どうすれば認められますか?」ということを、なるべく色んなパートナー、出来れば人事権のあるパートナーに繰り返しアピールすれば、認めてくれる可能性は低くないと思います。

    >③さらに、その際年齢が高いことが不利になることはあるのでしょうか。
    長くなって申し訳ありません。ご回答頂けると幸いです。よろしくお願いします。

    これは基本気にしなくていいと思います。社内の異動・グループ内の転籍において、年齢のハードルに引っかかって希望が通らないということはあまり聞いたことはありません。
    むしろ、やはり年齢が高い人の方がそれだけ将来の自分のキャリアプランを明確に持っていて動き出しが早いので、海外派遣、出向、転籍等は年齢が高い人の方がうまく利用しているような気がします。

    以上になります。
    参考になれば幸いです。

    • ただの経理マン より:

      ご回答ありがとうございます。

      希望が通るかどうかは自分次第ということですね。

      やはり組織に所属する以上、まずはしっかりと自分の役割を果たした上で自分の主張をしない限り上も納得しないですからね。

      まずは周りから認められるようにしっかりと目の前の仕事をすることが大事ですね。

      また、年齢も自分次第では有利に働くこともあるのですね。少し安心しました。

      とても参考になりました。ありがとうございます。
      次の記事も楽しみにしています。

  7. 論文待ち より:

    いつも貴重な情報ありがとうございます。
    1つ質問させてください。
    この記事や四大監査法人の比較を見て大変参考になっているのですが、まだ自分の中で決め手にかけるというか、かなり迷ってしまっています。
    色んな法人の説明会に行くとどこも魅力的に見えるし、あずさは人が多くて昇格に不利とか、新日本は東芝の件などがあり今入ると大変とか、とーまつは体育会系とか、あらたは人が足りなくて残業が多いとか、悪い噂(?)みたいなのも吹き込まれてけっきょくなにが本当なのかわかならなくなってたりもします。参考までにもしGTRさんが今就活をするならどこの法人を選ぶか教えて頂けますか?
    よろしくお願いします。

  8. GTR より:

    論文待ちさん

    コメントありがとうございます。
    就職において何を重視するのかは人によって異なるので一概には言えませんが、あくまで私ならということで書かせて頂きます。
    以下で書くことは私が耳にする情報ですので、正しい情報もあれば間違っている情報もあると思います。

    まず大きく以下の2つのパターンで考えます。
    ・監査法人に居続けて上を目指す→新日本orあらた
    ・若いうち(マネージャーぐらいまで)に転職して監査法人以外で活躍を目指す→トーマツorあずさ

    新日本とあらたは上位層に対する報酬が手厚いので、パートナーになる場合に収入面で旨みがあります生涯監査法人にいるのであれば新日本とあらたの方が生涯年収が増える可能性が高いように思います。(各法人ごとの給与の違いについては公認会計士の年収実態の調査結果総まとめ参照)
    さらに、新日本は新聞でも取りざたされているようにパートナーの退職を促す流れになっていますし、スタッフ~シニアスタッフ層の流出もけっこう激しいようです。あらたも契約取りまくって規模拡大しているのに対し人の採用が追いついていません。そのため、新日本とあらたは比較的出世競争のライバルは少ないのかなという感じがします。
    新日本や今落ち目のような扱われ方もされますが、落ち目の時こそチャンスであるとも言えます。
    それから、新日本が東芝の訴訟やクライアント流出で危ないみたいなことを思う人もいると思いますが、まあつぶれることはないだろうと自分は考えています。東芝の株主訴訟については、個人的には新日本が負ける可能性はかなり低いと思っています(損害賠償請求の一部を支払う形になる可能性はありますが、東芝が負担した課徴金を新日本が負担するのは明らかに変です。新日本は新日本で課徴金を払ってますし、監査人としての責任の中での処分は完了しています)。
    あらたもリソース不足で十分な監査ができずかつての中央青山のような事故をおこすのではないかということが言われてたりしますが、東芝問題で業界全体が敏感になっているので、さすがにいきなり法人が消滅するような事故はおきにくいかなと思っています。
    なので、将来パートナーになり監査法人で上を目指すのであれば、パートナーの給料が良くてライバルも相対的に少ない(と思われる)新日本とあらたかなと考えます。

    逆にトーマツとあずさは下位層に対する報酬が手厚いです。なので、マネージャーぐらいまでに辞める前提であればトーマツとあずさの方が間違いなく収入は多くなると思います。
    あずさはここ数年リクルートで人気があったこともあり、今年入るとすれば自分の上の何世代かは層が厚めです。特に2015年の採用はかなり採れたようなので、直上の先輩も多いということになります。上の人たちが滞留していれば必然的に自分達の代の昇格枠も減りますので、昇格という意味ではあずさは不利な気がします。実際シニアスタッフの昇格年次からしてあずさは他の四大より平均1年遅いようです。トーマツはあずさのような状況にはないと思いますが、やはり上の層になると新日本とあらたの方が報酬が高いという面があり、パートナーになれた場合の旨みは相対的に劣るかなという印象です。
    一方で、トーマツとあずさはシニアスタッフの給料が新日本とあらたより相当高いです。シニアスタッフ層の月額が最も低い新日本と最も高いトーマツだと8万円の差となります。年額にすると100万円になりますし、残業代も含めるともっと差も大きいです。なので、マネージャーになるぐらいで辞めるのであれば新日本やあらたよりもトーマツやあずさの方が間違いなく給料は良いです。
    あとは、トーマツとあずさの方が新日本やあらたと比べて外部で活躍している人が多いイメージがあります。これは、新日本やあらたでは若手の給料が安く上の層の給料が高いので、せっかく社内で昇格したんだから辞めるのはもったいないと考える人が多いのも必然のような気がします。逆に若手の給料が高いトーマツとあずさは若いうちに稼いで、経験を積んだら転職して次で活躍しようと考える人が多いような気がします。そのような前提があるので、法人としての風土として、トーマツとあずさの方が外部で活躍する人材は多いんじゃないかなと考えています。
    公認会計士出身経営者キャリア図鑑の記事でも書きましたが、実際に経営者となる公認会計士はトーマツとあずさが多いです。
    なので、転職して他の業界で活躍するつもりなら、若いうちにがっつり稼げて外で活躍している人材も多いトーマツとあずさがいいかなと思います。

    さて、では監査法人でパートナーを目指す場合に新日本がいいかあらたがいいかですが、これは行きたい部門の強み弱みと組織の雰囲気で選んでいいのかなと思います。部門で言えば、例えば金融でメガバンクを見たいなら新日本になると思います。雰囲気も新日本とあらたはけっこう違う気がするので、自分の肌にあうあわないは大事だと思います。
    新日本とあらたは同じ四大といっても規模は圧倒的に新日本の方が大きいです。新日本に行けばどの業界でも大小様々なクライアントがそろっているので、監査で言えば新日本の方がいいような気もします。あとは新日本は一番落ち着いた雰囲気はありますね。保守的な感じですし、年功序列感も強い気がします(あくまで感覚的な話ですが)。
    あらたは一部のビッククライアントはありますが、それを除くと他の四大とは明らかに規模が劣りますし監査クライアントの種類、規模も限定的になる感じはあります。しかし、外資色が強く成果を出すことが強く求められる風土があり(若手のうちはそんなに違わないと思いますが)、法人としてもイケイケな感じなので、営業とかは強そうです。新日本とは雰囲気はけっこう対照的な気がします。競争が嫌いな人は向かないかもしれません。
    なので、監査法人でパートナーを目指す場合は新日本とあらたの行きたい部門の強み弱みの違いと、雰囲気で選べばいいかなと思います。

    転職を前提とする場合トーマツとあずさについても基本的には部門の強み弱みと雰囲気で選べばいいかなと思います。若手のうちに辞めると考えた場合、条件面は基本的にはトーマツの方がいいように思います。具体的には、基本給はトーマツの方が良いですし、シニアスタッフへの昇格年次もトーマツの方が早いです。ただし、あずさは確実ではないものの、賞与が多くて基本給の差をカバーしているし、補修所交通費の負担など福利厚生面ではトーマツより良いです。目に見える部分はトーマツが良いが、目に見えにくい部分はあずさが良いという感じでしょうか。総合的に考えると結局大差は無い気がします。
    雰囲気で言えば、トーマツは成長志向とか前向きな人が多いような気がします。トーマツとあずさで言えば、トーマツの人の方が外に出て活躍しようという意思を持ってる人がより多いような気がします。あずさは人によるというか、中庸な感じですかね。
    実は風土・雰囲気面で言えば、トーマツとあずさはけっこう似ている気がします。どちらかというとこの二法人では法人間の雰囲気より部門間の雰囲気の方が違いはありそうです。例えばトーマツのIPO部門はトーマツの他の部門よりあずさのIPO部門に雰囲気・風土は似ている気がします。それは金融や国際といった部門でも同様な気がします。
    従って、トーマツとあずさは法人で選ぶというよりは、部門で選ぶという感じになるかなと思います。あとは私だったら部門への配属確約をどれだけ得られそうかで決めるかなという感じです。

    以上、ざっくりと私だったらという視点で書いてみました。
    最後に一つ、どの法人も他方人からネガキャンを受けていると思いますが、それはあまり鵜呑みにしない方がいいと思います。各法人のマイナス面が気になるのであれば、そについて説明会や面談の時に聞いてみて、自分できちんと考えた方がいいと思います。基本的にどの法人も自分の法人のいいところと他の法人の悪いところしか言いませんから。

  9. EYJK より:

    初めてのコメント失礼します。
    いつも非常に有益な記事をありがとうございます。

    私は有価証券市場、株式市場に強い関心があり、
    合格後は証券アナリストの資格も取得し、
    金融商品取引法等をより深く学習していき、
    資本市場の専門家として自分のキャリアを進めて
    行きたいと考えております。

    そのためにはやはり金融事業部がベストかと
    思ったのですが、私は金融機関・銀行などには
    全く興味がありません。あくまで私は資本市場に
    興味があります。このような人間にとっても、
    金融事業部がベストでしょうか?

    また、証券アナリストの知識は役立つでしょうか?

    お忙しいところ恐縮ですが御時間があれば
    ご返信よろしくお願いします。

  10. GTR より:

    EYJKさん

    コメントありがとうございます。
    難しいご質問ですね。
    そもそも「資本市場の専門家」というのが抽象的で、具体的にどんなことがしたいのかでだいぶ変わってくると思います。
    公認会計士の業務である監査は、それ自体が「資本市場の番人」などと呼ばれますし、ある意味で資本市場の専門家だと思います。
    監査ではなくて、投資がしたいというのであれば、証券会社や銀行の投資部門などに入るべきだと思いますので、どの部門に行くにしろ程度経験を積んだら若いうちに早めに転職したほうがいいと思います。
    証券会社や投資銀行への転職という意味でいえば、金融事業部で証券会社や投資銀行の監査をやるのが良いと思いますが、金融機関や銀行には全く興味がないということですので、なんともアドバイスしようがありません。
    最後に、証券アナリストの知識は役に立つかというご質問ですが、これも「資本市場の専門家」という定義が曖昧なので答えようがないのと、私自身が証券アナリストに関する知識がほとんどないので、証券アナリストの方に聞いてみた方が確実だと思います。
    あまり良い回答でなくて申し訳ありません。

  11. EYJK より:

    ご返信ありがとうございます。

    そうですよね。非常に回答のしにくい
    抽象的な質問をしてしまい申し訳ありません。

    質問する場として不適切かもしれない、と思って私は
    あえて抽象的な表現をさせて頂いたのですが、
    要は市場の知識を使って金儲けがしたいという事です。
    (村上世彰氏や堀江氏のような事を言っているわけではありません)

    投資をするにあたって金融事業部で得る知識はあまり役立たないのでしょうか?
    全く役立たないのであれば監査法人以外も就職先として視野に入れます。
    証券会社の監査をするという事で、将来、投資家として役に立つのではないか、
    (勿論インサイダー取引とは無縁です)と思ったのですが、
    これもやはり金融事業部の方でないと回答出来かねない質問
    かと思いますが、GTRさんのイメージとしては如何でしょうか?

    法人内では公認会計士及び証券アナリストという方は
    あまり見かけないのでしょうか?
    証券アナリストが役立つか否かというのは、監査法人内、
    金融事業部での業務にあたって役立つか、という質問です。
    これもまたイメージで結構ですが、回答頂けたら幸いです。

    非常に分かりにくい質問にも親切に答えて頂き、
    誠にありがとうございます。

  12. GTR より:

    EYJKさん

    市場の知識を使って金儲けと聞くと、パッと思いつくのは投資家とか株の運用ですかね。
    であれば、金融事業部とか監査法人での知識はほとんど生きないのではないかなと思います。
    あくまで私の私見ですが。

    証券会社の監査や、金融機関の監査ではその会社のビジネスの仕組みや、会社自体の仕組み、収益構造などについてはわかるようになりますが、そもそも投資家として稼ぐ=投資意思決定については直接経験は生きないような気がします。
    むしろ、通常の監査事業部やIPO部門で、どんな会社が上手くいくのか等を学んだ方が生きるかもしれませんね。

    おっしゃる通り、キャリアとして監査法人を選ぶ必要はあまりない気がしました。
    というか、もしかしたらそもそも公認会計士になる必要があるのかという話かもしれません。
    もっと投資ファンドとか、VCとか、投資銀行に行く方が早いような気もします。
    とはいえ、監査法人から投資ファンドやVCや投資銀行に行く人もいるので、監査法人のキャリアが全く無駄になるということはない気がしますね。
    会計士の資格と監査法人のキャリアを生かして転職し、実際に金を稼ぐための経験は転職後にする、というイメージかと思います。
    なお、私は金融部門ではないので、金融部門がどうかはわかりませんが、監査法人で証券アナリストの資格を持つ人を見たことはないですね。

  13. EYJK より:

    思ったほど監査の知識は生きないのですね、、、
    公認会計士と証券アナリストは相乗効果が高いと勝手に思っていたのですが、
    GTRさんは法人内で見たこと無いというのも意外で、非常に勉強になりました。

    選択肢を広げるためにも、武器を増やすためにも、公認会計士になろうという
    気持ちは変わりませんが、キャリアプランを修正していこうかと思います。

    丁寧に質問に下さり、本当にありがとうございました。

  14. KK より:

    GTRさん。コメント失礼致します。
    いつもブログを非常に勉強にさせて頂いております。

    パブリックセクターについて質問があります。
    GTRさんお忙しいかと思われますし
    急ぎの質問では決してないので
    時間が空いた時に目を通して頂ければ幸いであります。

    当方昨年の12月に短答突破致しまして
    8月の論文へ向けて勉強中ではありますが
    将来に迷いが生じております。

    公認会計士は資本主義の番人と呼ばれるように
    資本主義経済において、非常に重要な役割を
    占めているかと思いますが、実は私は
    資本主義社会があまり好きではないのです。
    それにも関わらず公認会計士を目指した理由等は
    割愛させて頂きますが、監査法人の職務において
    資本主義からやや離れた、公益性の高いと思われる
    パブリックセクターに興味があります。

    GTRさんはパブリックセクターではなかったと
    思いますのでイメージで構いませんが
    いくつか質問がございます。

    ①パブリックセクターにおいて強みとなる能力とは?
    (英語力、医療資格etc...)

    ②出世競争等、競争は激しいのか?
    (雰囲気はどうか。ガツガツしているのか)

    ③パブリックセクターの人気はどうか?
    (就活生が殺到したりするのか)

    ④どんな人が多いのか?

    ブログ内容と若干重複する部分もあり、恐縮ではありますが、
    その他、大きな特徴・イメージ等ありましたらご教授お願いします。

  15. GTR より:

    KKさん

    コメントありがとうございます。
    パブリック系部署について、実際にいたわけではないので詳しくはないのですが、同期の話を聞いたり、助っ人でパブリック系の監査に行ったこともあるので、そのへんの知識の範囲で回答します。

    ①パブリックセクターにおいて強みとなる能力とは?(英語力、医療資格etc...)
    ⇒特別強みとなる能力が何かはわかりません。英語とかはあまり使わないと思います。
    パブリック系の監査先は相手によって必要となる知識がけっこう違ったり、そもそもの法律も違ったりします。
    具体的には地方自治体、独立行政法人、医療系法人、学校法人、農協系組織etc...ですね。
    なので、パブリックセクターにおいて強みとなる普遍的な能力があるというよりは、自分が配属されたクライアントが対象となる法律や基準などをその都度素早くキャッチアップすることが重要だと思います。
    なので、あえてあげるとすれば継続的に勉強を続ける「勤勉さ」と言えるかもしれません。

    ②出世競争等、競争は激しいのか?(雰囲気はどうか。ガツガツしているのか)
    ⇒ガツガツしている人は少ない印象ですね。あくまでイメージですが。
    個人のキャリアアップよりも社会に貢献したいという意識が強い人が多い印象です。

    ③パブリックセクターの人気はどうか?(就活生が殺到したりするのか)
    ⇒希望者の絶対数は多くないように思います。
    しかし、募集している枠自体が少ないので倍率は高いように思います。
    例えば、私が入所したときは同期が200人ぐらいいまして、国内監査部門は東京で60人とかいましたが、パブリックは4人とかだった気がします。
    希望者が何人いたのかはわかりませんが、選ばれた4人はすごい優秀な人でした。
    なので、入るのは比較的大変かもしれません。

    ④どんな人が多いのか?
    ⇒上記の②でも書きましたが、社会に貢献したいという想いが強い人が多いような気がしますね。

    以上になります。
    ご参考になれば幸いです。

    • KK より:

      お忙しい中、細かくありがとうございます
      かなり具体的なイメージを持つことが出来ました
      非常に勉強になりました。ありがとうございました

      少し誤解を招く表現をしてしまった可能性があったので
      一応、補足しておきたいのですが、競争が嫌だから(楽したいから)
      パブリックセクターに興味を持っているわけではないという事を
      蛇足ながら補足させて頂きます。

      本当にありがとうございました。

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