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会計士試験撤退は負けなのか〜資格取得にこだわらない会計知識の活かし方〜

photo by:pixabay

 

こんにちは。会計士GTRです。

今回はずーっと書きたかった「会計士試験撤退は負けなのか」というテーマ。

会計士試験は合格率から見れば大多数の人が合格できない試験であり、その途中で撤退を決断せざるを得ない場合も少なくないだろう。

では、会計士試験から撤退することは負けなのだろうか。

個人的には、試験は結果が全てな部分がある一方で、会計士試験で得られた知識は、資格取得に至らなかったとしてもその後のキャリアに活かせるものなんじゃないかと考えている。

なので今回は「試験を受けようと思っているが落ちたときのリスクを考えると決断できない」人や、「会計士試験に受からず撤退を検討しているが、これまでの勉強が無断になってしまうことが怖くて踏ん切りがつかない」という人に向けて、試験に受からなかった場合の知識の活かし方について書いてみる。

 

時には会計士試験を撤退することも必要

会計士試験はハイレベルな母集団で合格率も極めて低い。

受験者数に対する合格率は10%前後。つまり90%の人は公認会計士になれないのだ。

さらに言えば、膨大な勉強量をこなせず試験受験に辿り着く前に挫折している人も多くいると思われる。

そんなレベルなので、努力すれば絶対受かる試験とは言えないだろう。時にはあきらめることも必要になるかもしれない。

もちろん安易な撤退は勧めないし、自分の努力の足りなさを棚にあげて「オレには無理だ」というのも良くないとは思うが、時には戦略的撤退も必要になるとは思う。

試験を受けている時は視野が狭くなりがちだが、世の中には会計士以外にも魅力的な仕事はたくさんある。変に試験合格に固執して自分の将来の可能性を狭めることがないように気をつけて欲しい。

 

 

会計士試験を撤退したらこれまでの勉強は水の泡になってしまうか

試験に撤退した場合、これまでの勉強が無駄になってしまう気もするが、実際はどうだろうか。

会計士は独占業務を有する国家資格である以上、試験に合格しているか否かで決定的な違いがあるのは事実だ。

合格者の最下位と不合格者とのトップでは実力にはほぼ差はないだろうが、合格と不合格では天と地ほどの差がある。

しかし、これはあくまで独占業務である監査や、税理士登録した場合の税務を行う場合(会計士は誰でも税理士登録ができる)の話である。

資格という形としては残らなくても、会計に関する知識は自分の中に残るはずだ。どんな仕事であっても、出世して責任あるポジションにつけばある程度の会計知識は必須であるから、会計士試験で培った知識は必ずどこかで役に立つ日が来ると思う。

ちなみに、会計士受験生で試験には合格できなかったが、答練などではそれなりに結果を出せるレベルであれば、かなり会計知識のレベルは高い。

会計試験の知識量は膨大なので、予備校である程度の成績を残している人は単純な知識量で言えば現役会計士や企業の経理部長レベルに近い知識は十分にあると思う。現役会計士でも会計士試験を受けなおして合格する人はかなり少ないと思う。

試験は不合格であっても、その知識レベルには十分自信をもっていいはずだ。

撤退を決断しても悲観的になることはない。これまでの自分の努力をしっかり認めてあげて、それを次に活かせばいいのだ。

 

 

会計士の資格をとらないことのメリット

さらに言えば、会計士試験を受けて会計士になれなかった人には会計士試験を合格した人にはないメリットもあると思う。

それは、一言で言えばキャリアの自由度だ。

会計士試験に合格すると良くも悪くもキャリアが資格に縛られる。

ほとんどの人が監査法人に入り、転職先は企業の財務や経理や内部監査部門、あるいは税理士法人、コンサル、ファンドや金融機関といった具合だ。

やはり資格を活かせる転職先を選ぶようになるし、そうしたキャリアを選んだ方が給料も良くなる。

しかし、それによって一生会計畑を歩むことになる会計士も多いのだ。

それはそれで恵まれたことなのだが、ふと自分のキャリアを見返してみると、営業とか、マーケティングとか、そういうビジネスサイドの経験をする機会があっても良かったなと思う。

試験から撤退しこ0からキャリアを描く人は、可能性が無限にあるので、例えば営業に行く人なら「営業✕会計知識」、マーケティングに行く人なら「マーケティング✕会計知識」といった具合に、会計知識をを1つの武器として複合的なキャリアを描きやすいと思う。

ビジネスサイドの経験を持ちつつ、経営に必須の会計的感覚も備えている。最強ではないか。

 

 

会計士試験から撤退しても活躍しているCFO

とはいえ資格という形で残らない以上、本当に資格がなくても会計知識が生きるのか不安なのも当然だ。

そこでこれから会計士試験から撤退したが最前線で活躍しているCFOを紹介していきたい。

 

 

株式会社インターワークス 取締役経営管理本部本部長 大平 秀行氏

photo by:Accountant's magazine

 

最初に取り上げるのはインターワークスの大平氏。

Accountant's magazine(全文読むには会員登録が必要)にインタビュー記事が載っているが、それによると大平氏は学生時代は「軟派なサークルにサークルに2つ3つ所属して、バイトに明け暮れる毎日」を送っていたそうだ。そして大学4年生になって就活を辞めて組織のトップに近いところで仕事がしたいと思い会計士になる道を選んだそうだ。

しかし会計士試験合格の道は険しく、7回目の受験に落ちて会計士の道をきっぱり諦めることになった。その時30歳であった。

資格取得は断念したものの、事業会社に行って経理・財務のトップになるという夢は諦めず、税理士事務所に入って会計のスキルをつけるという道を選ぶ。

そして会計士試験の知識をベースに税理士事務所でより実践的なスキルをつけた後ベンチャー企業へ転職し、インターワークスでは取締役に就任し、IPOを実現している。

大平氏はインタビューの中で「7年にわたる“モラトリアム”が、決して無駄ではなかった」と、以下のように話している。

「例えば、専門家から話を聞いても監査や経理、会社法などについてきっちり理解していたからこそ、より深い理解ができる。そんな感想を持つことが、たびたびありました。自分が抱える問題を解決するためには、専門家に何を質問すべきなのかも、知識の蓄積が助けになったのです」

また、インタビューの最後は以下のように締めくくられている。この言葉は会計士受験から撤退した人に大きな勇気を与えるのではないだろうか。

「資格が取れなかった人間が言うのも何だけど(笑)、事業会社の中で、会計士であること自体は、あまりアドバンテージになりません。しかし、その知識、技量は、明らかに武器です。スキルを武器にするんだ、という気持ちで出ていけば、相当面白い仕事ができると思いますよ」

 

 

株式会社ユーグレナ 取締役CFO 永田暁彦氏

photo by:Widge project

 

次に「ミドリムシ」で有名なバイオベンチャーの株式会社ユーグレナで取締役CFOを務める永田氏を紹介しよう。

何度かお話を伺ったことがあるが、話すだけで頭の良さがわかる超優秀な方だ。

永田氏は大学在学中に会計士試験を受けていたが、インターンをしていた株式会社インスパイアへ入社を決断したことで会計士試験から撤退。

おそらく勉強を続けていたら確実に合格していたであろうが、それよりもインスパイアへ入社することに魅力を感じたのだろう。

そしてなんと新卒で入社した翌年にはインスパイアの投資先であるユーグレナに社外取締役として参加し、その後正式にユーグレナに移りCFOになる。

永田氏はWidge projectというインタビュー記事の中で、若くして取締役としてユーグレナに参加して、認めてもらうために意識したことは「会計と法務」だと答えている。

そこで特に印象に残ったのが以下の言葉。

「年齢・経験にかかわらず、納得してもらえるということで言うと、その二つ(会計と法務は)だと僕は確信していたので。ルールが決まっているのです。」

「なので、取締役会に参加しても、「これは会計上の判断でこうですよね」とか、「これは法律上の判断でこうなりますよね」とか、その都度しっかりと納得感を持ってもらえるようにしていましたね。」

「どれだけパフォーマンスや能力を出したいと思っていても、相手に受け入れてもらわらなければ意味が無いですからね。
人間性で受け入れられるということも大切だと思うんですけど、やっぱり仕事ですので、「こいつは使える」と思ってもらわなければならないですよね。
そういう意味で、マーケティングとかデザインとかは、感性や主観がとても反映されやすいと思うんですが、会計と法務に関しては、新人であろうと関係ないと思うんですよ。」

会計士試験で培った会計知識を武器に社内で認められてCFOになり、若くしてバリバリ活躍されている。

永田氏のキャリアは前述したWidge projectの他にもCFO roadにもインタビューがあるので気になる人は是非。

 

 

 

株式会社ショーケース・ティービー 取締役管理本部長 佐々木義孝氏

photo by:CFO road

 

佐々木氏はなんとIPO(株式新規上場)を三度も経験しているまさに上場請負人だ。

その経験を活かし『実戦! 上場スタート』という書籍も出版している。

CFO roadにインタビューが載っているが、会計士試験を目指して会社を退職したものの、結局断念して再就職したことが以下のように書かれている。

「「会社にしがみついてちゃダメだ。やっぱり(会計士の)資格を取って独立しよう!」なんて思って、後先考えず辞めちゃったんです。若気の至り以外の何者でもないですよね…。結局、1年もしないうちに貯金も早々に底をつき、あと、腰のヘルニアを悪化させて勉強どころじゃなくなってしまって、また就職活動。」

そしてその後ベンチャー企業数社を渡り歩きIPOを目指すも上場には至らず、自信を失うなかなんとハローワークでたまたま見つけた会社でIPOを成功させる。一度IPOを成功させるとその経験が高く評価されいきなり人材価値が上がったことをインタビューの中では以下のように話されている。

「上場直後からすごかったですね。外資系証券からもどんどん電話がかかってきて。「IPOするとバリューがあがるんだ」という強い実感が持てました。チャンスや人脈も、こちらが積極的に動けばどんどん出来ていく。そこからは、今まで足踏みしていた分を取り返す意味でも、本当に自分のバリューを高めるためにだけ、ひたすら頑張った感じです。」

その後は上場を目指す企業から引っ張りだこで、3社のIPOを成功させている。会計士という資格にこだわる必要がないことを身をもって証明されている。

 

 

株式会社マネーフォワード 執行役員CFO 金坂直哉氏

photo by:CFO road

 

最後にとりあげるのは今話題のFintech領域のベンチャー企業マネーフォワードのCFO金坂氏。

CFO roadのインタビューでは以下のように語られている。

「実は、大学時代に「ビジネスマンとしてのベーシックスキルを付けたい」と思い、いわゆるダブルスクールで会計士の資格スクールに通っていたんです。」

 

しかしその後自分がやりたいのは監査ではなく金融だという言うことに気づき方向転換し、ゴールドマン・サックスへ入社している。

そしてゴールドマン・サックスで8年間働き、マネーフォワードに入社して執行役員CFOに就任している。

会計士を目指すことは辞めたものの、会計や財務に関わる道を歩んでおり、会計の知識を活かして活躍されていることがわかる。

CFOは会計士以外にも銀行や証券会社といった金融機関出身者も多い。

単純な会計知識であれば会計士の右に出るものはなかなかいないが、監査ではなく企業の経営に役立たせるという意味では、必ずしも会計士レベルの会計知識は必要でないことも多い。

会計士試験の勉強である程度会計の知識を得られたのであれば、それを武器に金融畑に行くという選択肢も十分あるはずだ。

 

 

試験撤退した場合のキャリアの

このように会計士試験を撤退してもその知識を活かして企業経営の道を歩まれている方はいる。

では試験撤退を決めた場合に具体的にどのようなキャリアを選べばいいか。

まだ学生である人は変に会計や経理といった軸で縛らず、単純に興味のある領域で就活をすればいいと思う。どんな道を選んでも会計知識を活かせる時がきっとくるはずだ。

記事の前半でも書いたように会計知識が武器としてある以上、逆に会計とは離れたキャリアを選ぶことが武器になることもあると思う。

 

一方で、ある程度年齢が上で新卒で就活ができない人は会計知識を直接活かせるキャリアを選ぶのがいいかもしれない。

会計事務所や事業会社の経理等では会計士試験受験生の中途採用を積極的に行っているところもあるし、BIG4系のコンサルでも元会計士受験生を採用していたりする。私の友人も20代後半前職なしで経理職やBIG4系コンサルに入社した人がいる。

 

就職・転職にあたっては会計・経理専門の転職エージェントを使ってみるのもいいと思う。

おすすめなのは会計・経理人材の転職に特化したジャスネットキャリアかMS-Japan。

ここは資格保持者に関わらず会計・経理人材に特化した転職エージェントなので、会計士試験の知識を活かした転職相談にも慣れている。

下記はアフィリエイトリンクとなっているので、紹介することで私に報酬が入るから紹介しているということは最初に断っておくが、実際問題この2社は会計・経理系人材には強いし、私自信も使ったことがあるのでオススメできると思う。

特にジャスネットキャリアに会員登録しておくとこの記事でも触れたAccountant's magazineのインタビュー記事でCFOのキャリアを詳細に知ることができる。

いずれも登録は無料なので登録して損はないだろう。

【ジャスネットキャリア】

MS-Japan

 

 

まとめ

今回は会計士試験を撤退する人に向けて、会計士試験で得た知識が本当に役に立つのかという視点から記事を書いてみた。

会計士試験を辞めて別の道を選んだ方の中にもCFOとして活躍されている方は実際にいることや、そうしたCFOのインタビュー記事から会計士試験の知識は十分役に立つものだということがわかったと思う。

もちろん誰でもここで例をあげた方のようにうまくキャリアを築けるわけではないが、会計士試験からの撤退により必ずしも知識が無駄になったりその後のキャリアの失敗につながるわけではないことはご理解頂けたかと思う。要は資格という形には残らなくとも試験で得た知識をどう活用するかということだ。

なお、この記事では決して「会計士試験は受からなくても大丈夫」ということが言いたいわけではない。

やはり試験を受ける以上は絶対に合格するつもりで勉強すべきだし、基本的には試験に受かった方がいいに決まっている。

今回伝えたかったことは、本気で勉強しても試験に受からなかった場合や、会計士試験よりもやるべきことが見つかった場合には、戦略的に撤退することも必要だし、撤退しても決して負け組になってしまうわけではないということ。

本気で努力すればそれが無駄になることはないと信じているし、そうであって欲しいと願う。

 

-公認会計士キャリア論


 comment
  1. ムッタ より:

    GTRさん、お久しぶりですムッタです。

    2017年3月15日(水)の日本経済新聞の1面に東芝の不適切会計で決算の公表を再度延期。
    監査を担当した新日本監査法人の関係者はAI(人工知能)があれば不正を見抜けた。
    「10年後には仕事を奪われるかもしれない」新日本の公認会計士、平野英史氏の不安が募る。

    かなりかいつまんで言うと、こんな感じです。

    英オックスフォード大と野村総合研究所が調べた「10~20年後にAIやロボットで代替可能」という職業のなかには会計士と弁理士、行政書士、税理士の4仕業が含まれている、とあります。

    いまから、「公認会計士を目指すぞ」という僕からするとショッキングな記事でした。

    GTRさんはこのような記事を、どう思われますか?
    僕としては、かなり気持ちが沈む思いです。

    公認会計士になれば、それなりにやっていけると思っていたのですが、会計士の未来はどうなって行くと思われますか?

    大変お忙しい中、恐縮ですがご回答お待ちしております。
    それでは、失礼致します。

  2. GTR より:

    ムッタさん

    コメントありがとうございます。
    AIについては色々な方から質問を頂くことが多いので、素人意見ですが今度記事で詳細に書こうと思います。
    なのでご質問については簡単に回答させていただきます。

    結論から言って、会計士の仕事も多かれ少なかれ将来はAIに仕事を奪われると思います。
    とはいえこれは士業に限らず全ての仕事に言えることだとも思います。
    税理士や会計士などの資格がAIに代替される仕事と言われるのは、これらは税務や会計というルールに当てはめて機械的に判断しやすい領域だからだと思います。
    そういう意味で特に税務はガチガチにルールが決められているのでAIに代替しやすい領域だと思います。特に記帳代行や簡単な税金計算は今でのある程度AIを利用したクラウド会計などで出来てしまうところなので、既に少しずつ仕事は奪われていると思います。
    一方で会計は比較的判断の余地が多いものなので、税務と比べると全てを機械に置き換えるのは難しい領域だと思います。特に監査は対企業とのやりとりのなかで虚偽表示を発見することが求められるので、相手がAIを欺くべく不正を行う場合などは人間が登場する必要があります。
    そういう意味で完全にAIに置き換わるまでにはかなりの時間がかかると思います。
    但し単純な監査手続はどんどんAIによって効率化していくので、会計士の仕事が減るのは間違いないとは思います。ただ、個人的には単純作業をAIに任せてより重要な領域に集中できるのであれば悪い話ではないかなと思っています。
    また、会計士に限らず今後は単純作業はAIに置き換わっていく世の中になると思うので、どんな仕事をするにしろ差別化をして自分の強みを持つことが重要になると思います。

  3. ムッタ より:

    GTRさん、コメントありがとうございます。
    ムッタです。

    AIにより、単純作業の仕事の効率化を図るために新時代に突入した、という感じですかね。
    浅はかな考えですが、僕は公認会計士の資格をとって、会計士になることは死ぬまで職に困らないものだと思っていました。
    でも、今はそういう時代ではなくなってしまったのですね。
    これから、会計士を目指すうえで不安です。

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