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監査法人日記11〜その他の販管費〜

2016/05/08

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※登場する人物名・組織名は全て仮名です。

 


 

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さて、前回人件費の分析的実証手続について話したが、今回は人件費以外の販管費。

販管費は全ての勘定科目を厳密に検討するのではなく、ある程度金額で絞って重要な勘定科目を中心に検討が行われる。

ニコニコマーケットでは各販管費の検討は以下のように区分された。

 

 

 

 

店舗数・売上に基づく分析的実証手続

GTR「販管費は分析の種類ごとにまとめて分析的実証手続を実施するんでしたよね。」

先輩「そうそう。まずは固定家賃、水道光熱費、修繕費、消耗品費だな。」

GTR「これは店舗数に基づく分析的実証手続ですね。」

先輩「うん。こういう科目はうちのような他店舗展開してる会社だと店舗数に応じて発生する。もちろん厳密には出店地域や店舗の広さによって、店舗あたりの金額はまちまちなんだけど、監査は効率性も求められるから、厳密に店舗坪数でやるんじゃなくて、簡便的に店舗数でやってるんだよ。」

 

 

 

GTR「それから、包装費、クレジットカード手数料、変動家賃は売上高をを使った分析的実証手続ですね。」

先輩「これらの費用は基本的に売上に連動して発生するはずだからね。」

先輩「あと、もちろん各費用が何によって増えるかは会社によって違う。水道光熱費や消耗品費は店舗で見ると固定費的に発生していれば店舗数に応じて増えるけど、会社のビジネスによっては変動費的なもので売上によって増えるかもしれない。修繕費は定期的に発生する会社もあれば、数年ごとの大規模修繕以外では発生しない場合もある。分析的実証手続きをやる時はそれぞれの発生にきちんとした相関関係があることが前提となるから、どの会社も全く同じってわけじゃないから、注意してな。」

GTR「うっす。」

先輩「じゃあ実際分析やってみな。」

GTR「やり方は基本的に前回の人件費と同じようにやればいいんですよね?」

先輩「そうだね。基本同じ。店舗数を使うときは前期と当期の期中平均店舗を出して分析を行う、売上とかP/L科目を使う場合はそのまま使えばいいけどね。」

GTR「やってみます」

 

 

・・・

 

 

・・・

 

 

GTR「消耗品費と修繕費で期待値との間に異常な差異が発生してしまいますね・・・」

先輩「どれ、見してみ。」

 

固定家賃

水道光熱費

①前期 計上額

5,011,968

439,752

②前期 平均店舗数

502

502

③前期 1店舗あたり金額(①/②)

9,984

876

 

 

 

④当期首店舗数

511

511

⑤当期末店舗数

533

533

⑥平均店舗数((④+⑤)/2)

522

522

⑦期待値(③×⑥)

5,211,648

457,272

⑧当期実際計上額

5,228,001

451,192

⑨差異額(⑧-⑦)

16,353

-6,080

⑩許容金額

100,000

9,000

消耗品

修繕費

①前期 計上額

307,224

166,664

②前期 平均店舗数

502

502

③前期 1店舗あたり金額(①/②)

612

332

 

 

 

④当期首店舗数

511

511

⑤当期末店舗数

533

533

⑥平均店舗数((④+⑤)/2)

522

522

⑦期待値(③×⑥)

319,464

173,304

⑧当期実際計上額

389,965

143,321

⑨差異額(⑧-⑦)

70,501

-29,983

⑩許容金額

7,600

2,800

 

先輩「あー、確かに。結構差異でかいな。こういう場合って何が考えられる?」

GTR「まず、簡便的に期首と期末の店舗数で平均店舗数を出してますけど、それが数値を歪めてることが考えられます。出店は期首に集中する場合もあるので、それによっては単純な期首と期末の合計じゃ平均にならないのかも・・・」

先輩「そうね。その可能性はある。あとはすごく大きい店舗の出店があって、平均値を歪めているとかね。けどさ、固定家賃とか水道光熱費とかはある程度差異が小さいわけじゃん。そうすると店舗数にはあまり問題はないと思うな。」

GTR「確かに・・・。そうですねー、うーん・・・。修繕費は、前期に大規模修繕があって金額が大きかったのかもしれません。前期が通常よりも大きく、1店舗あたりの金額が例年と比較して過大であったとすると、前期数値を使った分析では期待値が過大方向に出るので、期待値より実際発生額が小さくなります。」

先輩「そうだね。前期と当期の状況に何か変化は無いかを会社に聞いてみようか。」

GTR「わかりました。」

 

 

・・・

 

 

・・・

 

 

GTR「聞いてきました。やはり修禅費は前期に関西エリアの全店舗で大規模修繕があったみたいです。それを除けば例年通りだろうとのことです。それから、消耗品費については、店舗で発生するものではなくて、支店の移転があったらしく、その引っ越しに際して発生したものが結構あるみたいです。あと、当期の店舗数には反映されていないですが、来年の頭に出店する店舗が結構あって、それが金額を大きくしている原因だろうとのことです。」

先輩「なるほどな。期中平均店舗を使うときは、通常は営業開始している店舗を含めるけど、営業開始前の店舗でも一定の費用は発生するからね、それを区分して考える必要があるね。」

GTR「理由はわかったんですけど、これって監査手続きとしはどう反映すればいいですか?」

先輩「分析的実証手続きはあくまで定量的に分析する必要があるから、大規模修繕とか支店移転にかかった費用分を除外して分析する必要があるね。」

GTR「会計システム上どの店舗や支店で発生した費用かはわかるので、修繕対象店舗や移転した支店、営業開始前の店舗の費用分を除いてみます。」

 

 

・・・

 

 

・・・

 

 

GTR「できた!」

先輩「どれどれ・・・」

消耗品

修繕費

①前期 計上額

307,224

166,664

②内、特殊発生額

0

29,000

③前期 通常費用部分(①-②)

307,224

137,664

④前期 平均店舗数

502

502

⑤前期 1店舗あたり金額(③/④)

612

274

 

 

 

⑥当期首店舗数

511

511

⑦当期末店舗数

533

533

⑧平均店舗数((④+⑤)/2)

522

522

⑨期待値(③×⑥)

319,464

143,149

⑩当期実際計上額

389,965

143,321

⑪内、特殊発生額

65,322

0

⑫当期 通常費用部分(⑩-⑪)

324,643

143,321

⑬差異額(⑫-⑨)

5,179

172

⑭許容金額

7,600

2,800

 

 

 

先輩「お、きれいにハマってるな」

※ハマるとは分析的実証手続が合理的な差異金額(=許容金額)内におさまることを言う。

GTR「なんとか、結構時間かかっちゃいました。」

先輩「前期と当期に特殊発生額って項目を入れて、前期だけの事情あるいは当期だけの事情のものを除外してるんだな。」

GTR「はい。」

先輩「最後に、特殊発生額が本当に分析的実証手続の対象から除外していいものかどうかは、ちゃんと調書の中で理由を明記するのと、その事実を確かめるんだぞ。会社の言うことを鵜呑みにすると、本当は異常な費用の発生なのに見落としるって可能性もあるからな。」

GTR「はい。それについては別途関連資料を会社に依頼中です。去年の修繕費は大規模修繕に関するものが社内稟議で承認されているらしいので、その資料と証票を依頼してます。消耗品費は支店の移転の事実と、営業してない店舗が本当に営業前であることを確かめた上で、特殊発生額の中にそれら支店移転とOPEN前店舗以外のものが紛れ込んでいないかを確かめます。」

先輩「それならOK」

 

 

 

販管費の詳細テスト

GTR「よし。これで分析でできるものは大体終わった。減価償却費や引当金繰入額は販管費担当者じゃなくて固定資産担当者や引当金担当者がやるからいいとして・・・残るは詳細テストの対象科目だな。」

GTR「詳細テストの対象は・・・広告宣伝費がメインだな。一応先輩に確認しとこう」

 

 

・・・

 

 

GTR「先輩、詳細テストの手続について質問していいですか?」

先輩「おう。どうした。」

GTR「手続の手順ですが、まずはサンプリングをして、サンプルが抽出できたら関連証憑と突合すればいいんですよね?証憑としては、契約書、見積書、納品書、請求書、銀行の出勤明細または通帳って感じでいいですか?」

先輩「うん。いいと思う。取引形態によっては全ての資料があるわけじゃないから、場合によっては契約書がないとか、見積書がないとかもあると思うから、どんな資料が見れるかは会社に確認しな。」

 

 

GTR「はい。ちなみにサンプリングはどのようにやればいいですか?」

先輩「詳細テストの対象抽出方法は特定項目抽出とサンプリグがあるけど、それは長くなるからまた今度話すわ。」

GTR「わかりました。」

 

 

先輩「ちなみに、どういう費用が詳細テストでやるべきかはわかってる?」

GTR「はい。特定の相関関係がない費用が対象という認識です。例えば、広告宣伝費は、当期いくら使うかは会社の判断で決められます。全く広告を打ち切ってもいいし、将来への投資も踏まえて広告に費用を集中的に投じる場合もあります。店舗数とか、売上とか、人員数とか、特定の数値に連動するわけじゃないので分析はしようがありません。」

 

 

先輩「そう。その理解でいいと思うよ。詳細テストは非効率な場合が多いから、通常は分析で出来るものは分析でやるからね。ただ、分析もできるけど詳細テストの方が効率的な場合もある。どういう場合かわかる?」

GTR「取引数が少ない科目なら、詳細テストでも効率的な場合があると思います。」

先輩「そう!例えば、分析的実証手続でやった消耗品費も、例えば業者が1社のみであれば、その業者との取引証憑だけ見ればいいから、全月を対象としてみたとしてもそんなにかからない。人件費でやった役員報酬も分析で出来る場合もあるけど、役員の人数は限られているから詳細テストの方が効率的なんだよね。」

GTR「なるほど、勉強になります。」

 

 

 

こうして詳細テストは関連証憑との一致を確認して無事作業が終わった。

 

 

 

つづく。

 

 

-体験記-監査法人日記


 comment
  1. さる より:

    会議費、接待交際費は詳細テストですか?分析するんですか?
    詳細テストでサンプリングする場合は、金額目安はあるんですか?サンプリングの基本は25件ですか?

  2. GTR より:

    さるさん

    会議費、接待交際費はやるとしたら詳細テストだと思いますね。
    ただ、そもそも監査手続きは全ての勘定科目を対象に実施するわけではありません。
    いわゆるリスクアプローチで、リスクの高い勘定科目にフォーカスして監査手続を実施します。リスクの高い勘定科目とは質的重要性と量的重要性で判断します。そのため、例えば見積もり項目のように経営者の判断が入るものは質的重要性が高いものとして監査手続の対象となりますし、金額の大きい勘定科目(販管費で言えば人件費や地代家賃や広告宣伝費等が多額になりやすいです)が監査手続の対象となります。
    この点会議費や接待交際費は金額的に小額で質的にも重要でないと判断され、そもそも実証手続の対象とはならないこともあると思います。
    (業界によっては多額に接待交際費が発生していたり接待交際費を利用して不正がなされるリスクが高く質的に重要と判断されることもありますが)
    その場合は、販管費全体での増減分析や、月次推移分析を実施して、前期比で不自然な増減となっていたり、特定の月でのみ多額に発生するというような異常がないかを確認して終わりという場合もあります。

    • さる より:

      お忙しい中、返信ありがとうございます。

      毎回、とても楽しく読ませていただいてます。

      そもそも、交際費は、全体の中での重要性が低いということですね。(当社では販管費全体の1.5%程度です)
      広告宣伝費・販売促進費も全体の2%程度です。

      ちなみに、人件費が全体の40%弱。運送・倉庫管理料が全体の25%弱で半分以上を占めてます…

      P/Lは全体金額の前年分析・月次推移での異常数値の確認という感じになるんですか?

      販管費分析にも前年実績と予算があるとおもいますが、前期比増減で110%以上とか・月平均金額に比べて特定月だけ突出しているなどが目安になるですかね。

      そもそも、上場企業の親会社の会計監査と
      連結子会社の会計監査では日数も人数も違いますよね?あくまで、B/Sが重点的に監査されるんですかね…

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