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監査法人日記7〜現場前の作業と初めて怒られた話〜

 

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※登場する人物名・組織名は全て仮名です。


 

 

 

前回4月1日の話を書いたが、上場企業であればクライアント先へ往査するのは決算月の翌月半ばごろになる。3月決算であれば4月15日前後。

現場に出るまでにやる作業について書いてみよう。

 

 

 

確認状の回収

まずはやはり確認状の回収作業だ。

新人の仕事で最も重要なのが確認状の回収だろう。

確認状は自分の事務所に届くようになっている。

別現場に行っていても、届いた確認状を回収するためにわざわざ夜事務所に戻らなきゃいけないことも多い。

 

 

確認状はすごく手間と時間のかかる手続きだ。

発送してから回収までに1週間程度はかかるし、先方が対応してくれないこともある。

そのため対応が遅れると意見日までに監査証拠が入手できないなんてこともありうる。

しかも、確認状は外部から直接監査証拠を入手するため、極めて証明力の高い監査手続き。

そのため気軽に他の手続きで代替することは出来ないのだ。

 

 

確認状回収時に注意することはいくつかある。

 

 

まずは内容が適切に記入されているか。

例えば銀行確認状は項目に該当ない場合は「該当なし」と明記してもらう必要がある。

記入漏れがあると先方へ再発送となる。

それから確認状は必ず先方の社印での押印を求める。

これがないと監査証拠としての証明力が低下するため、押印漏れがあったり担当者の個人印で押印されていると、社印の押印を求めて再発送となる。

再発送とは、返送されてきた確認状を再度相手先に送り「ここの記入が正しくないから直してもう一回送って下さい」というもの。

結構面倒くさい手続きなのだ。

 

 

次に、確認状の回答額が対象の残高と一致しているか。

一致していれば話が早いのだが、一致していないと差異の確認に作業を要することになる。

基本的にはクライアント先(被監査会社)の担当者に原因追求を依頼する。

原因がすぐにわかる場合もあるし、会社の人ですら差異理由が不明な場合がある。

不明な場合は先方(確認状発送先)に連絡して、原因を調べてもらうこともある。

差異の原因がわかっても、その理由を証票等により合理的に証明しなくてはならない。

とにかく作業が増えるので、確認状で差異が出るとすごくめんどくさいのだ。

 

 

そして、期限までに回収できていない確認状は先方へ確認し督促する。

督促は基本的にクライアント先に行ってもらう。

監査人が直接連絡しても、普段取引関係でもないため先方が混乱するからだ。

確認状はけっこう期限までに回収しきれない。

期限が来ても未回収が残っていると、クライアント先の担当者に依頼して督促してもらう必要があるため、けっこう面倒くさい。

 

 

未回収が多いと、クライアント先から「こんなにあるんですか?いやいや、全部督促するなんて無理ですよ。」と言われることもあるし、気が重い作業ではある。

しかし「今日期限でまだ来てないけど、明日か明後日には届くかもしれないし、督促はそれからでいいかな。」なんて悠長に構えていると本当に回収できなくなって主任に怒られることになる。

新人で怒られる理由の最も多いものに「確認状の対応がしっかりできていない」というのがあると思う。

「お前この確認状いつが期限だと思ってんだよ!まだ督促してないのかよ!」

「回収できないなら代替手続きの準備しろよ!対応が遅すぎるよ!」

なんてやりとりをよく聞くものだ。

 

 

 

クライアントについて情報収集

現場に行く前にクライアント先について勉強した。

先輩からは「計画調書を見ておけ」と言われたが、正直計画調書を見ても、見方がわからないので全然頭に入ってこなかった。

先輩からはクライアント先の財務諸表分析の宿題も出された。

過去の有価証券報告書を見て会社の状況を把握する。

会社の過去の業績、当期の状況、資産負債の構成、どんな勘定科目があるか、どんな論点があるか、安全性、経営効率・・・

 

 

 

過去の調書に目を通す

監査は毎期監査計画を策定し、実施する監査手続きを決定する。

しかし大きな企業環境の変化が無ければ、前期と同じ手続きが取られることが多い。結果、前期調書をもとに調書をアップデートすることになる。

事前に調書に目を通しておくと、現場に入ってからの効率がアップする。

特に新人のうちは手続きを理解するのにすら時間がかかったりするので、事前に自分の担当する監査調書に目を通しておくことは必須だ。

監査調書はエクセル8割、ワード1割、紙1割といった感じだ。

 

 

 

債権債務確認状の発送

会社の月次決算が固まった時点で、サンプルを抽出し確認状を発送する。

サンプル抽出は1年目の最初の現場でやらされることはないので、先輩が担当した。

サンプル抽出はエクセル用の監査ツールを使い、統計学に基づいて対象を抽出する、いわゆる統計的サンプリングが中心となる。

新人である私が担当するのはもう少し先の話。

 

 

 

そんな感じで4月前半を過ごした。

この間私も例に洩れず、確認状回収の対応が悪く早くも先輩に一度怒られた。

確認状はステータスをコントロールシートという表にまとめるのだが、コントロールシートのイメージはこんな感じ。

INDEX 会社名 発送日 期限 回収日 状況 備考
1001 ○○東京UFJ銀行A支店 4/1 4/15 4/9 回収済
1002 ○○東京UFJ銀行B支店 4/1 4/15 先方から期限までに回答は難しいと電話にて連絡あり。4月20日ぐらいまでには返せるとのこと。
1003 みず○銀行C支店 4/1 4/15 4/12 回収済
1004 みず○銀行D支店 4/1 4/15 4/14 回収済
1005 みず○銀行E支店 4/1

4/15

4/15

4/22

4/15 再発送中 「その他」の欄の記入が漏れており4/15再発送。
1006 ○○住友銀行F支店 4/1 4/15 督促依頼中
1007 ○○住友銀行G支店 4/5 4/20 会社作成漏れで発送が遅れた。

 

 

ある日先輩から電話が来た。

GTR「はい、GTRです。」

先輩「お疲れ様。今時間大丈夫?」

GTR「はい。大丈夫です。」

先輩「今確認状のコントロールシート見てるんだけどさ、いくつか聞いていい?まずさ、○○住友銀行F支店て督促中って書いてあるけど、状況確認できた?」

GTR「はい、担当の岡野さんに依頼しています。まだどうなったかは確認できていませんが。」

先輩「了解。わかったらコントロールシート更新しといてね。」

 

 

先輩「それからみず○銀行C支店の確認状、ちゃんと項目の漏れ確認した?」

GTR「はい。したはずですが・・・何か変ですか?」

先輩「ここさ、会社は当座預金持ってる銀行じゃん。当座勘定照合表入ってないよね?同封を求めて再発送しなきゃだめでしょ。」

GTR「あ、すいません、見落としてました。」

先輩「項目埋まってるだけじゃなくて、ちゃんと全体見て確認してよ。これ、すぐ再発送してね。」

GTR「はい。次気をつけます。」

 

 

先輩「それからみず○銀行D支店、回収済って書いてあるけど、調書に回収した確認状入ってないよ?どこにあるの?」

GTR「すいません、昨日回収したんですが、時間がなかったのでクリアファイルに入れてジョブのロッカーに置いてあります。後で調書に入れようと思ってて・・・」

先輩「対応する時間がないのは仕方ないけどさ、ちゃんとコントロールシートに状況記載しとかなきゃだめでしょ。俺とか主任はコントロールシート見て判断するだよ?もし回収済ってあるのに調書に入ってなかったら、紛失したかと思うでしょ。コントロールシートには常に最新の状況を書くこと。」

GTR「はい、すいませんでした。」

 

 

 

こんな感じで、初めてのお叱りを頂いてしょんぼりする自分であった。

 

 

今にして思うと、怒ってくれるってのは本当にありがたいことだ。

やっぱり自分の先輩、同期、後輩を見てても、きちんと怒られて育ってきた人はしっかり成長している気がする。

例えば上記のような注意も、些細なことではあるが、先輩が「まあ初めてだし俺がやっとけばいいか」と思って何も言わずフォローしてくれると、その場では楽だが自分の身にはならない。

先輩は先輩で「どうしたらこいつを成長させられるかな?ここは怒った方がいいか?このぐらいはいいか?いや、今後同じ間違えをしないためにはここで厳しめに言っといた方がいいな・・・」

と、考えた上で怒ってくれているのだ。

 

 

むしろ怒るのは怒る方も労力がかかるから、あまり怒りたくないのもの。にも関わらず考えた上で意図して怒る。

自分が先輩の立場になって、適切なタイミングで適切に怒るということの難しさを感じる日々だ。

 

 

中にはむちゃくちゃ怖くて成長以前にメンタルやられてしまう上司や、理不尽なことで怒る先輩もいる。

いやいや、さすがにお怒りすぎだろって思うこともある。

しかし大部分の「お叱り」は自分のためと思って、あまり落ち込まずポジティブに捉えよう。

 

 

 

続く。

 

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