ブログde会計

公認会計士がブログで会計について考える

監査法人日記9~監査手続「預金」~

監査法人日記を最初から読む場合はこちら。

前回はこちら。

各記事へのリンクをまとめた目次はこちら。

※登場する人物名・組織名は全て仮名です。


 

 

writing-1170146_1280 (1)

預金は基本的に銀行確認上の残高とぶつけるだけで残高の実在性は確認できる。

超基本的な監査手続だが、意外とめんどくさいのが増減分析。

基本的にどの科目も増減分析は実施するが、預金は会社のビジネスの結果として増減が生じるものであるため、増減を把握しづらい。

 

 

INDEX 銀行名 前期 当期 増減 増減率
1001 ○○東京UFJ銀行A支店 普通 111 158 47 42%
1002 ○○東京UFJ銀行B支店 普通 321 553 232 72%
1003 みず○銀行C支店 普通 384 442 58 15%
当座 88 102 14 16%
1004 みず○銀行D支店 普通 55 63 8 15%
1005 みず○銀行E支店 普通 401 433 32 8%
1006 ○○住友銀行F支店 普通 15 15 0 0%
1007 ○○住友銀行G支店 普通 10 10 0 0%
合計 1,385 1,776 391 28%

 

 

 

主任「預金の調書見たけどさ、ぜんぜん増減理由がわからないんだよね。」

GTR「うーん、預金の増減については会社の担当者の方に聞いてもなか理由がはっきりしないんですよね。」

主任「現預金てのはさ、会社のビジネスの結果が反映されるものだからさ、一年生がやらされる科目だけどとても大事な科目なんだよ。不正があれば変な増減が生じることもあるから、確認状との一致を見るだけじゃなくてきちんと増減をコメントすること」

GTR「承知しました。確認してみます」

 

 

 

ひとまず経理の担当岡野さんに質問してみることにした。

岡野さんはすごく腰が低くてザ良い人という感じの方。

新人会計士にも優しく対応してくれて、仏の岡野と呼ばれている。

 

 

 

GTR「岡野さん、今お時間少しよろしいですか?」

岡野さん「はいはいはい。どうぞどうぞどうぞ。」

何でも三回繰り返すのが岡野さんのしゃべり方の特徴だ。

 

 

 

岡野さん「どうしました?」

GTR「先日も少しお聞きしましたが、銀行残高の増減についてもう少し詳しくうかがってもいいですか?」

岡野さん「はいはいはい。」

GTR「まず、全体的に預金が増加している理由ですが、借入による影響ということでいいんですよね?」

岡野さん「そうそうそう。3月の末日付近でね、1億円借入してるのよ新しく。その影響だよね。○○東京UFJ銀行B支店の残高が増えてるでしょ?」

GTR「そうですね。ただ、残高の増加は4億近くあるので、ほかの要因もあるとおもうんですが、何か思い当りますか?」

 

 

 

岡野さん「うーん・・・」

 

 

 

岡野さん「特にないなあ。色んな要因があるからねー。これというのは思いつかないねー。」

GTR「そうですよね。なかなか難しいですね。残高を一定額に保つっていうルールはあるんですよね?」

岡野さん「まあ、ルールといっても規定で定めてるわけじゃないどね、残高を10億程度で維持するようにしてるよ。」

GTR「そうすると、当期の水準は10億よりけっこう多いですよね。」

岡野さん「そうねー。まあけっこう多いねー。気になるなら、総勘定元帳で全仕訳が見れるから、勘定科目「預金」の、補助科目を「○○銀行東京A」で調べると、残高の推移がわかるはずだよ。」

GTR「そうですね。ひとまずそれで調べてみます。」

 

 

 

GTR「それから、○○東京UFJ銀行A支店の残高が去年の40%増ぐらいに増えているのは何でかわかります?」

岡野さん「あ-あーあー、それはあれだね、入金業者の入金のタイミングだね。」

GTR「入金業者の入金タイミング・・・ですか?すいません、どういうことですか?」

岡野さん「うちの店舗はさ、毎日売上を入金業者に回収してもらってるでしょ?入金業者は回収した資金を毎週月曜に入金してくれるんだよね。当期は期末日が入金日だったからその分資金は増加してるよ思うよ。」

GTR「あー、そういうことですね。わかりました。確認してみます。それから・・・・

 

 

 

こうして岡野さんを質問攻めして増減の理由を聞き出し、それを仕訳を見る等して確かめる。

GTR「あー確かに岡野さんのいうように毎週月曜に入金があるな。ふむふむ。」

GTR「○○東京UFJ銀行B支店については・・・お!3月はじめに1億円の入金があるな。なんだろうこれ。『ニコニコロジスティクス貸付金返済』って書いてあるな。ニコニコロジスティクスって確か子会社だったよな・・・」

 

 

 

GTR「後藤先輩」

後藤先輩「おう。どーした?」

GTR「なんか本部の口座の預金増加を見てたら、ニコニコロジスティクスから借入金の返済があったみたいなんですけど、ご存じですか?」

後藤先輩「あー、あれね。今までグループの借入は親会社のニコニコマーケットでやってたでしょ?んで、ニコニコマーケットから子会社に貸し付けてたんだけど、ニコニコロジスティクスは資金が余剰傾向にあったから、親会社に返済したらしいよ。」

GTR「あー、そうなんですね。でも、ニコニコマーケットは新たに銀行から借り入れもしてるんですよね。子会社の借入金が返済されるなら、新たに借入する必要はない気がするんですが・・・」

後藤先輩「まーそうだね。そこは俺もよくわかんねーな。会社の人に聞いた?」

GTR「はい。聞いたんですけど、岡野さんはあまり把握されてないみたいです。」

小林先輩「あ、それ、俺たぶんわかるよ。」

 

 

小林先輩はシニアスタッフで自分の6個上の先輩だ。

 

 

小林先輩「確か、外の会社買うらしいよ。まだ決定ではないんだけど、取締役会議事録では議題に上がってる。」

GTR「なるほど、その時の資金需要を見越してだから資金を増やしてるんですね。」

小林先輩「まだオフィシャルには決定してないからね、たぶん末端の経理部員である岡野さんは把握していなかったんじゃないかな。」

 

 

 

GTR「主任、増減については把握できました。細かい要因はいくつかありますが、主な要因は子会社取得を見込んだ資金需要に対応して、1億を新規借入、1億を子会社貸付金の回収で資金を増やしています。」

主任「そうそう。そこに気づいて欲しかったんだよ。」

GTR「やっぱり主任は気づいてらっしゃったんですね。」

主任「それはそうだよ。僕は現場に入ると最初に試算表の全体的な増減分析と、会社の議事録や稟議書のレビューをしてるからね。」

GTR「なるほど。」

 

 

 

主任「岡野さんとかは優しくて話しやすいかもしれないけど、全部の情報を把握しているわけじゃないからね。場合によっては経理部長とか、もっと上の人にも質問しないとわからないこともあるからね。わからないことはちゃんと調べること。いいね。」

GTR「はい。わかりました。」

主任「あと、最後に簡易キャッシュフロー計算書分析やっといて。」

GTR「あ、それ前期調書にあってやろうと思ったんですけど、やり方がよくわからなかったんですよね。」

主任「要は、簡単にキャッシュフロー計算書を作って、資金の増減が会社の動きから見て変じゃないかを確かめるんだよ。」

GTR「どのぐらい細かくやればいいんですか?」

主任「まあ、そこまで細かくやらなくてもいいけどね。税前利益から初めて、償却費と引当金増減の非資金項目を調整して、主要な営業債権債務の増減調整して、投資と財務を調整する。」

GTR「でも、固定資産の取得額とか、資金調達額とか正確にわからないです・・・」

主任「別に本物のCF計算書みたいに、借入金よる増加~とか、借入金の返済による減少~とかはやらなくていいよ。でも借入金の増減を出せばなんとなく資金の動きはわかるでしょ?」

GTR「はい。わかりました。やってみます。」

 

 

 

 

・・・

 

 

 

・・・

 

 

 

GTR「簡易CF計算書分析・・・ぜんぜんハマらない。」

 

 

 

・・・

 

 

・・・

 

 

GTR「お、なんとなく現預金の増加と一致したぞ。・・・あ、これ配当によるキャッシュアウト考慮し忘れてる。あ、配当入れたらまたハマらなくなった。」

 

 

 

・・・

 

 

・・・

 

 

 

こうして苦戦しつつもなんとか簡易CF計算書を作成し無事預金調書が完成した。

 


 

監査調書・預金(増減分析)

  • 手続:①確認状による残高確認②増減分析③簡易C/S分析
  • 結論:重要な虚偽表示がないことについて十分かつ適切な監査証拠を得た
  • 単位:百万円
INDEX 銀行名 前期 当期 増減 増減率
1001 ○○東京UFJ銀行A支店 普通 111 158 47 42%
1002 ○○東京UFJ銀行B支店 普通 321 553 232 72%
1003 みず○銀行C支店 普通 384 442 58 15%
当座 88 102 14 16%
1004 みず○銀行D支店 普通 55 63 8 15%
1005 みず○銀行E支店 普通 401 433 32 8%
1006 ○○住友銀行F支店 普通 15 15 0 0%
1007 ○○住友銀行G支店 普通 10 10 0 0%
合計 1,385 1,776 391 28%
増減コメント
・来期子会社取得を検討しており、資金需要に備えて預金残高を増やしている。

・○○東京UFJ銀行B支店については、3月2日に子会社への貸付金100百万円の返済、3月31日に借入金100百万円の実行により残高が増加している。

・○○東京UFJ銀行A支店は入金業者からの入金タイミングにより、当期は期末日に入金があったため残高増加している。

・○○住友銀行の口座は銀行との付き合いで口座開設したが、日常的には使用しておらず、預金利息を除いて増減なし。

・資金の増減は以下の通り
税前利益 121
減価償却 246
引当金増減 250
売上債権増減 △199
仕入債務増減 55
〜略〜


 

 

 

 

つづく。

 

 

この記事は

View Results

Loading ... Loading ...

-体験記-監査法人日記


Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です