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「内部留保=悪」というクソみたいな誤解がいかにクソなのかクソ簡単に説明する

最近内部留保や利益剰余金が増加傾向にあることを持って企業を批判する記事や、それを真に受けて企業を批判する主張をときどき目にする。

コラム:企業の利益剰余金390兆円、経済の停滞要因に

企業が株主へ配当せず現預金を溜め込んで適切に運用できず投資効率が悪いことを批判するのはわかる。

しかし、配当しないことは内部留保増加要因の1つではあるが、内部留保増加それ自体が悪なのではない。

そこを理解せずに、企業が内部留保を増やしている→企業が投資もせずお金を溜め込んでいる→内部留保に課税すべき、みたいな誤った認識を持たれている方も少なくないようだ。

このあたりの誤解について説明しようと思う。

 

そもそも内部留保って何?

内部留保(正式な良い方をすれば利益剰余金)とは、簡単に言えば過去の利益の蓄積である。

例えば、りんごを1個100円で買って、250円で売れば利益は150円となる。

仮に1年間で100個のりんごを買って売ったとすると15,000円利益が出る。

実際には利益に対して税金が引かれるので、例えば5000円が税金として取られると、残る利益は10,000円となり、これが内部留保として蓄えられる。

毎年10,000円の利益が出るビジネスを10年間続けたら10,000円✕10年=100,000円の内部留保が蓄積されることになる。

 

内部留保が増える要因は以下のようになる。

  • 税金を引いた後の利益がプラス(黒字)

 

内部留保が減る要因は以下のようになる

  • 税金を引いた後の利益がマイナス(赤字)
  • 株主へ配当する

 

 

 

内部留保に関する嘘と誤解

メディアが内部留保=利益剰余金の増加を批判しているのが、企業を批判するための印象操作なのか、本当に理解していないのかは定かではないが、それを真に受けてしまっている人も多い。

内部留保=利益剰余金に関する嘘 or 誤解について解説する。

 

内部留保が増えるのは悪いこと

そもそも、内部留保が増えることを悪いことかのように言う人がけっこういるが、これはとんでもない間違いだ。

そもそも株式会社は利益を生むことを目的とした組織だ。

利益が出ることは良いことであり、利益が増えれば内部留保は増える。

そしてこの利益は既に雇用している従業員に給料や賞与を払ったり、国に税金を収めたりした後に残った部分である。

赤字の企業は潰れる。潰れれば雇用もなくなるし、税金も収められない。基本的に利益が出ている企業は良い企業なのである。

 

内部留保が増加するのは企業がお金を溜め込んでいるから

内部留保が増加したことを持って「企業がお金を溜め込んでいる」と断定した主張がよく見られるが、これは正しくない。

もちろん利益が増えれば基本的にはお金は増える傾向にあるが、利益の額=現金の増加では決して無い。

例えば、前述したりんごを売るビジネスで、年間100個のりんごを買って売ったとすると税金を払ったあと10,000円利益が残る。

そして来年売るためのりんごを100個(10,000円)買って、在庫として保有していたとする。

この場合、利益は10,000円だが、現金の増加は0円となる。

このように、利益が出たからそれがそのまま会社の現金になるわけではない。

 

内部留保が増加するのは企業が投資をしないから

内部留保の増加を批判するときに、「内部留保が増加しているのに企業は設備投資もせずお金を溜め込んでいる」と主張する輩がいるが、それもまた正しくない。

どういうことが例を見てみよう。

前述したりんごを売るビジネスがうまくいき、現金と留保利益が1,000,000円蓄積されたので、運搬用の車1,000,000円を買うことにした。

この車は5年間使える場合、毎年200,000円ずつ費用となる。

この場合、現金は今までためた1,000,000円が車を買ったことでなくなるのでプラスマイナス0円となる。

一方、留保利益は1,000,000円蓄積されており、車は年間200,000円ずつしか費用にならないため、留保利益は一気には減らない。

このように、利益をそのまま設備投資にまわしても留保利益は大きく減らない。

そのため、発生した利益を全て設備投資に回しても留保利益は減らないのだ。

投資をせずに内部留保が増えている企業は確かにあるが、内部留保増えているから設備投資をしていない、というのは嘘である。

 

内部留保が増加するのは企業が従業員に利益を還元しないから

会社は基本的には株主に利益を還元することが目的であり、従業員はコストである。

従って、利益が出たからといってそれを従業員に還元する義理はない。

もちろん、社会の公器という役割からみて、ある程度従業員にもリターンを還元すべきという主張が全く間違っているわけではない。

しかし、従業員の給料を一度上げると下げるのは相当大変であり、簡単に解雇もできない。

利益が出た時に大きく給料を上げることもなければ、損失が出た時にもきちんと給料は払う。

だからこそある程度安定して給料を払うことができるのである。

 

内部留保に課税すべき

ときどき内部留保に課税すべきという主張を見る。

しかし、企業は既に税金を払った後の利益を内部留保として計上しているのである。

内部留保に課税するというのは二重課税もいいとこだ。

さらに言えば、企業から株主へ配当されるタイミングでも課税されることを考えると三重課税と言ってもいいだろう。

しかも、ここまで説明したように企業には内部留保と同額の現金を保有しているわけではない。

例えば日本を代表する企業であるトヨタ(グループ)は内部留保17兆6,010億円に対し、現預金は2兆99,50億円しかない。

トヨタに次いで日本企業として純利益1兆円を達成したソフトバンク内部留保の2兆9,583億円に対し、現金は2兆1,831億円あるが、借入金等の有利子負債は14兆8,583億円もある。

内部留保を配当したくても、利益と同額の現金があるわけではないので不可能なのである。

 

内部留保が増加するのは会社が株主に配当をしないから

利益が出たなら株主に還元しろという主張は基本的には正しい。

株主は会社に対しお金を預け、出た利益からリターンをもらうことを目的としている。

会社が潰れれば株の価値は0になってしまうし、株主はある程度のリスクを負って会社に出資しているので、リターンは正しく返すべきである。

但し、前述した通り、会社は利益の分だけ現金を持っているわけではない。

むしろ、会社を成長させるために積極的に投資をしていると、増えた利益よりも現金は少ないことの方が多いため、配当したくても内部留保を全て配当することはできないのだ。

「投資に回さず現預金を溜め込んでいるなら配当しろ」という主張は正しいが「内部留保は全て配当しろ」という主張は明らかに間違っている。

 

まとめ

ここまで説明した通り、内部留保が増えることは決して悪ではない。

内部留保=現金を溜め込んでいるということでもない。

内部留保が増える=投資をしていないというわけでもない。

内部留保は従業員に還元すべきものでもない。

内部留保は会社の資金余力ではないし既に税金を払ったあとのお金だから課税すべきものでもない。

内部留保は全て配当可能なわけでもない。

 

もちろん、内部留保をうまく使えず配当もせず、現金として溜め込み投資効率が低い会社はいくらでもある。

しかし、そうした企業を批判すべきときは「投資利効率が悪い」と批判すべきであって、内部留保が増えていること自体を批判すべきではない。

 

メディアはすぐ大企業を悪者にして記事を書きたがる、あるいは記事を書いている本人が本当に理解していない可能性もある。

そんな記事に惑わされず、是非正しい理解を持っていただきたい。

-雑記その他


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