こんにちは。会計士GTRです。
今回は会計士キャリアインタビュー第二弾。
前回は監査法人で英語をどう活かすかという話しを聞いたが、今回のテーマは中国語。
今回は私の受験時代の仲間で、あずさ監査法人の金融事業部でシニアとして活躍する白井聡さんにインタビューしました。
白井聡さん
2011年 早稲田大学法学部卒
2011年 公認会計士試験合格
2012〜2013年 中央財経大学(北京)留学
2014年 有限責任あずさ監査法人金融事業部入所
Contents
会計士を目指そうと思ったきっかけ
ー最初に会計士を目指そうと思ったきっかけを教えて下さい。
もともと家系が資格一家で、父親は国家公務員、母親は社会福祉士、兄が公認会計士で、祖父が土地家屋調査士・建築士という一家でした。
そんな家庭で育ち、小さい頃から祖父に「男だったら資格の1つでも取れ」といった教育を受けたことから、子供ながらに将来は自分も何か資格を取ろうと思って育ちました。
大学に入って実際に何か資格を取得しようと考えた時に、法学部なので司法書士の資格取得をしようと決めました。
弁護士という道も考えましたが、当時弁護士の就職難が社会問題になっていたり、弁護士は時として犯罪者の弁護もしなければならないという部分が気になり、法律系の資格である司法書士の資格を取得することにしました。
司法書士は一年間勉強しましたが合格できず、そのまま勉強を続けるか、他の資格取得をするか、就職するかといったことを考えていたタイミングで会計士試験に合格していた兄から会計士の資格取得を薦められました。
兄とは子供の頃から一緒に勉強をしていて、暗算等は兄に負けたことがなかったことから、自分に向いていると思って薦めてくれたようです。
そこで大学4年の初めぐらいで会計士試験の勉強を開始しました。
会計士試験受験時代
ー白井さんは受験時代から予備校でも常にトップの成績を維持してましたが、受験時代に苦戦した経験はありますか?
基本的には大きく苦戦したことはなかったのですが、唯一の失敗が選択科目で民法を選択したことです。
もともと法学部で法律科目に自身があったため、あえて民法を選択したのですが、民法は母集団も少なく、法律に特化した人が選ぶ科目だったので、総合成績では合格水準を満たしていたのに民法だけ足切りになって不合格という結果でした。
ー受験時代の同期の中でトップを走っていた白井君がまさかの不合格だったのは印象的でした。
不合格者の中では2位の成績で総合成績では余裕の合格水準だったので、本当に民法さえ選択しなければ受かってたと思います。
翌年は経営学を選択肢して24位の成績だったので、1年目から経営学を選択しておけば良かったと後悔しました。(笑)
ー受験時代にやって良かったこと、やっておけば良かった事などあれば教えて下さい。
やはり予備校で友達をたくさん作ることが大事だと思います。
友達とは休憩時間に話しすぎてしまって時間を使ってしまうこともありますが、やはり一緒に切磋琢磨できるライバルからは刺激を受けます。
長期的に見ても、会計士になったときのネットワークも構築できて、生涯刺激しあえる仲間になるので、受験時代に仲間を作ることは大事だと思います。
当時はもっと色んな人と話しておけばよかったなと思います。
中国留学したきっかけ
ー会計士試験合格後は中国留学をされてますが、どういった経緯で留学したのか教えて下さい
当時は監査法人の就職難でしたが、受験1年目に監査法人から内定をもらえていた(※1)ので、2年目も内定を取れるだろうと高をくくってあまり就活対策をしていませんでした。
(※1 2010年までは就活開始時期が9月で論文試験の成績が出る前であったため、論文受験者は論文試験終了後に就活をスタートしていた。2011年から合格発表後の就活に変わった)
その結果、四大監査法人から内定をもらえず、一般企業や中小法人の就活も受けることになりました。
もともとお笑いが好きだったこともあり、吉◯興業を受けて内定を頂き、当初はそこに就職するつもりでいました。
しかし補習所でたまたまあずさ監査法人の中国留学プログラム(※2)のチラシを目にし、海外留学するか迷うようになりました。
(※2 当時あずさ監査法人が、費用を法人負担で試験合格者を海外留学させてくれるプログラムがあった。現在は当時の形では実施していない)
もともと海外留学には関心があったのでけっこう迷ったのですが、家族や友人にも相談して海外留学という道を選ぶことにしました。
受験時代に、周りの意見を聞かず民法を選択して失敗した経験があったので、幅広く周りの意見を聞こうと思ったのです。
当時の中国留学プログラムは、監査法人への就職が保証されるものではなかったので、2年間就業しないリスクはありつつも、せっかくだから挑戦してみようと思ったのです。
中国留学中の生活、留学で得られたもの
ー中国留学中はどのような生活を送っていたのですか?
留学先は中央財経大学という、日本で言うと一橋大学のようなイメージの大学です。
平日は毎日午前中に中国語と英語の授業があり、午後は自由だったので自習したり遊びにでかけたりしてました。
ー今では中国語をビジネスレベルで使いこなしていますが、留学中に語学習得のために心がけたことはありますか?
特にはじめの頃は、あえて日本人とつるまずに、とにかく中国人の友達を作って、その友達と遊ぶようにしました。
最初は常に電子辞書を片手に、なんとかコミュニケーションをとっていたのですが、3ヶ月たったころから気づいたら電子辞書が必要なくなったのです。
そのあたりから日常生活では困らないレベルになり、中国語の語学力が大きく向上した実感があります。
正直、単語を覚えるとか文法を覚えるといった勉強は日本でもできるので、せっかく留学したのであれば机に向かって勉強するよりも現地の人と交流することが大事だと思います。
現地の人とお付き合いすると特に効率的です。(笑)
ー中国に留学して文化的な違いで驚いたことはありますか?
中国人と日本人で大きく違うなと感じたことで、友人との距離感というものがあります。
日本人は友人や家族であっても「親しき中にも礼儀あり」という精神がありますが、中国では他人と身内の扱いの差が大きく、仲良くなってしまうとむちゃくちゃフレンドリーになります。
例えば本当に仲良い友人になると「ありがとう」と言わないんですよ。「ありがとう」というのが白々しくて、逆に距離感を作ってしまうらしいです。
また中国では割り勘という文化がなく、仲間内で食事をした時は誰かが払い他の人はおごってもらうという文化があります。
中国で割り勘をすると、その会はつまらなかったものという意味合いがあって「今回は自分が奢る、その代わり次回はお前が払ってくれよ」という貸し借りをあえて作ることで、その場だけでなく長期的な関係を作っていこうぜという文化があるのです。
表面的な部分ではなく、こうした文化面もきちんと学べたことは現地の人と交流して良かったことの1つです。
ーやはり留学したメンバーの中でも、語学をきちんと習得できる人とできない人の差はあるのでしょうか
やはり差はありますね。
留学すれば誰でも語学がペラペラになるわけではないです。
当時の留学プログラムの目標として、中国における中国語の試験の最高レベルをとることと、TOEIC800点ぐらいをとるというゴールがあったのですが、その目標に到達できない人もいました。
ー後輩受験生には海外留学をすすめますか?
すすめます。特に、大学三年次に合格した人はなるべく長期の海外留学をおすすめしています。
ある程度長期の留学をしないと、語学だけでなく文化面も学ぶことは難しいので、学生の時間があるうちは長期の留学に行ったほうが良いと思います。
就職してからはなかなかまとまった時間が取れず、スキルの面での差別化がしにくいので、時間がある学生のうちはチャンスだと思います。
また、語学だけでなく、文化的な面や現地の人の価値観に触れることで、一人の人間としても大きく成長できると思います。
中国は日本以上の競争社会で貧富の差も大きいので、大学の友達もみんな大胆でとてもストイックでした。
生きていくためには自分の意見をハッキリ言うことが必要で、周りの自己主張も強いので、その環境に身を置いて、自分自身も物事をしっかり自己主張できるようになったなど、人間的な成長も今に生きていると感じています。
監査法人での仕事について
ー2年間の留学から戻って、あずさ監査法人の金融事業部に入られましたが、そこを選んだ理由を教えて下さい
一応他の法人の就活もしたのですが、中国留学の費用を負担してくれていた恩を感じていたので、あずさ監査法人へ行くことを決めました。
部門としては、国内、国際、金融、IPOといった部門から希望を出すのですが、当時第一志望は国際事業部を選択しましたが、結果的に金融事業部の国際系の部署に配属されることになりました。
あずさは金融事業部の下に監査1〜3部と、金融アドバイザリーの計4部署があり、その中で人の異動もあって幅広い経験ができるのが良いところだと思います。
そしてあずさ監査法人は中国と繋がりが強い法人で、中国系の金融クライアントも多かったので、中国語を活かしたい人には是非あずさの金融事業部をおすすめします。
ー金融事業部にはどのようなクライアントがあり、どのような業務をしていますか?
クライアントは入社当時は外資系の銀行を担当したり、最近は日本のメガバンクやメガバンクグループ子会社孫会社や、中国の銀行の在日支店を担当しています。
監査だけでなく、レビュー業務やAUP(Agreed upon procedure=合意された手続)業務、翻訳やアドバイザリー業務など比較的幅広い経験をさせて頂いています。
最近は3社ほどインチャージをやっています。
ー金融事業部はクライアントの規模が大きいので、なかなか若手にインチャージが回ってこないイメージがありますがそのあたりはどうですか?
確かにクライアントの規模が大きいので、監査ではなかなか若手がインチャージをできないのは事実だと思います。
ただレビューやAUPは比較的若手でもインチャージを経験する機会があり、特に自分は中国語ができるので、中国系銀行の在日支店の業務等、インチャージをやるチャンスが早く巡ってきたと感じています。
同期の中でもインチャージ経験は早い方だとは思います。
ー仕事をしていておもしろいと感じること、つらいと感じることがあれば教えて下さい
監査以外でもレビューとかAUPを経験できたことで、監査だけでない幅広い業務の水準感を身に着けることができました。
監査ならこれはやらなきゃいけない、AUPならこれはいらないとった感覚がわかるようになって、仕事がおもしろくなりました。
つらいことは、そんなに思いつかないのですが、インチャージをやるようになって部下のマネジメントで苦労することは多いですね。
ー自分がインチャージ等上の立場になってみて、会計士として成長したり評価されるためにはどのようなことが必要だと思いますか?
若手のスタッフのうちは、とにかくコミュニケーションをたくさんとって、わからないことをすぐに上席に相談することが大事だと思います。
そうすると上席者が「どこまでわからない」ということがわかるので、どういう指示を出せばいいかがはっきりし、上の立場からすると仕事が非常にやりやすいです。
また、依頼された仕事に対し期限内に与えられたことをやるだけではなく、その指示の趣旨を汲み取ってプラスαの仕事ができると、その人の成長にもなるし、上司からしても安心できるので評価にも繋がると思います。
ー週末はどのように過ごしていますか?
あずさ監査法人の福利厚生の一環で部活動があるのですが、同じプログラムで北京へ留学した同期と自分で、新人の時にバドミントン部を創設して、月一で活動しています。
監査法人だけなく、タックスやアドバイザリー等のKPMGグループのメンバーも参加してますし、deloitteやpwc等の他のBig4系グループとの交流もあり、人脈構築につながっている部分があります。
月一回の練習と、年一回四大法人対抗戦もやったりしてます。トーマツが強いです。(笑)
また、バンドをやっていてベースを担当してます。JICPAの東京会主催の音楽祭でライブをやったりもしてます。
監査法人で中国語ができることのメリット
ー中国語ができることは白井さんの強みだと思いますが、業務の中で実際にメリットを感じるのはどんな時ですか?
金融事業部の国際系部門では、USCPA取得者や帰国子女が多く、英語ができる人はそこそこいるイメージです。
中国語については、留学経験者や中国にルーツを持つ方等もいますが、数はまだまだ多くなく、英語と比較してより希少性が高く強みになっているという実感はあります。
具体的には、先程話した通り中国語ができることで、中国系企業の非監査業務やインチャージ経験が若手のうちからできていますし、中国語ができることでクライアントや上司からの評価に繋がっているという実感もあります。
スタッフ2年目のときに、メガバンクグループのノンバンク会社の中国出張に連れてってもらって、現金実査をやったのですが、クライアントの担当者と中国語でコミュニケーションをとりながら現金実査をやって、クライアントの日本本社の経理部長から褒められたのが嬉しかったのを覚えています。
ーやはり語学ができることでチャンスは増えるという実感はありますか?
ありますね。
特に印象に残っているのが、スタッフ3年目で某クライアントの中国の支店を巡ってコンプライアンスチェックをする仕事にアサインされたことです。
当初はクライアントからマネージャークラスを指定されたのですが、中国語ができたことで自分がアサインされ、1ヶ月程かけて中国9都市の支店を回りました。
こうしたチャンスが回ってくるのは語学という強みがある大きなメリットだと思います。
また、グローバル展開しているクライアントを対応する監査チームには、日本人だけではなく海外のメンバーファームから派遣されてきた方や、ローカルで採用している外国人等、日本人以外のメンバーもいるのですが、外国語ができるとそうした複数国籍のチームメンバーのマネジメントもできるので、そういう意味でもチャンスは広がります。
ー会計士試験に合格した後輩には中国語習得をすすめますか?
すすめます。
自分が中国留学したことには就職においてリスクがあったと思いますが、リターンも大きかったので、もっと受験生にも海外留学の良さや悪さを伝えたいという思いがあります。
監査法人の中では会計士資格はみんな持っていて差別化にならないので、自分なりの強みを持つ上で、語学というのは有効な手段だと思います。
みんな英語は勉強しますが、やはり中国語ができる人はまだまだ少ないので、中国語の方がより差別化できて有利です。
将来目指す会計士像
ー将来目指す会計士像を教えて下さい。
今自分が持っているスキルは、監査のスキルと、中国語と英語の語学スキルです。
今は監査のスキルを伸ばすのが柱だと思って仕事をしています。
今後はさらに中国語、英語を伸ばしていき、将来は世界どこに行っても監査ができる会計士になりたいと思っています。
受験生に向けたメッセージ
ー最後に、会計士受験生や後輩会計士にメッセージがあれば教えて下さい。
会計士にかぎらず、資格を取ろうとする人は自分の能力を形にしたいという想いがあると思いますが、会計士をとったことに満足せずに、他に武器を身につけることは大事だと思います。
会計士という資格は監査というフィールドに立てるだけで、監査法人の中では差別化はできません。
会計以外の武器を身につければ、世界が広がり、自分の成長にも繋がります。
そのために、最初は幅広く色んなものに興味を持ってやってみることが大事かなと思います。
もし中国語に興味ある方がいれば、監査法人で中国語会計士の会というのを作って活動しているので、連絡を頂ければ色々力になれると思うのでご相談下さい。
連絡先はこちら→satoshi91011@hotmail.co.jp
ーありがとうございました!!
まとめ
以上、中国語ができる会計士白井さんにインタビューしてみた。
監査法人の中で差別化するための手段として語学はわかりやすい武器だが、みんな英語は勉強するが他の言語が出来る人は多くない。
あえて英語ではなく中国語を学ぶメリットは大きいと感じた。
今後もこうした会計士のキャリアについてインタビューを少しずつしてみたいと思っているので、もしインタビューして欲しい、こんなインタビューが読みたいというご要望があれば、コメント欄、ツイッターアカウントの@CPAGTR、メールでcpagtr@gmai.comのいずれかへご連絡下さい。
ぜひUSCPAのみで活躍されている知人がいらっしゃったら、インタビューしていただけると嬉しいです。
ナツさん
コメントありがとうございます。
意外と周りにUSで仲良い人がいないのですが、探してみます。