こんにちは。会計士GTRです。
12月短答後にDMや質問箱に、5月短答→8月論文ストレート合格に向けた勉強法についての質問が立て続けに来ました。
おそらく私が租税経営0で5月短答に突入し、5月短答後に租税経営を仕上げた記事を見て頂いたのだと思う。
個別にDM返す余裕がないので、過去記事のリライト(焼き直し)ですが、ざっと記事にまとめます。
この記事は以下の方に向けて書いています。
- 12月短答に不合格が確実 or その可能性が高い状況で、5月短答→8月論文のストレート合格をあきらめていない
- 12月短答後~5月短答までの勉強方法に迷っている
- 短答特化すべきか、租税経営もやっておくか迷っている
- 5月短答に確実に合格したいが、論文合格も捨てたくない
- 租税や経営にほとんど手を付けていない or 苦手
前提の確認
勉強方法について書く前に、私自身が合格した時の状況に軽く触れておく。
私は2010年12月に短答不合格になり、2011年5月短答に合格し、そのまま2011年8月論文に合格することができた。
2010年12月に短答不合格になった時点で租税・経営はほぼ0という状態だった。
租税経営は12月短答合格後にやればいいと思い手を付けていなかったのだ。
そこから私自身勉強の仕方をかなり迷いながらも、5月短答までは租税・経営は一切触れないことを意思決定して5月短答を突破し、その後ほぼ0から租税・経営をインプットして何とか論文に合格することができた。
その時の経験から、5月短答→8月論文のストレート合格のためのノウハウについてはある程度役に立つ情報を共有できると思う。
なお、ここに書くのはあくまで私自身の経験から来るものであり、私自身に以下の傾向があることをお断りしておく。
- 試験に合格したのは2011年でありけっこう前であるため今の試験に100%当てはまるとは限らない
- 私自身が短答は2回目で落ちており、2011年は短答合格率が3.5%と極めて低かった時期であり、短答を過度におそれている
- 一方論文はあまり手応えなかったものの一発合格しており、論文をやや甘く見ている(短答よりは論文の方が楽と考えている)
上記の前提をふまえた上で関心を持って頂けるようなら、以下を読み進めて頂ければと思う。
なお、受験時代の話しはシリーズ化して記事を書いているので、よければそちらも見て頂けたらと思う。
短答特化すべきか、論文を見据えバランス重視でいくべきか
この記事を見てくれている多くの人は、以下のような点について悩んでいるのではないだろうか?
- 5月短答に確実に合格したいが、8月論文合格も諦めたくない
- そのような状況で、5月短答優先で短答科目に専念すべきか、租税や経営といった論文科目にも手を付けるべきか迷っている
- 12月~5月までどう時間をつかうべきか悩んでいる
- ある程度論文合格を見据える場合、いつから短答に特化すべきか悩んでいる
- 論文合格までを視野に入れるなら論文答練・論文答練に手を付けるべきか悩んでいる
これらについてまず私なりの結論を言うと、短答を最優先すべきだ。
理由はやはり、短答に合格しないとそもそも論文を受けられないためだ。例え論文に受かる実力があったとしても、短答に受からなければ全く意味がない。
逆に、短答に合格さえすれば、少なくとも論文を受ける権利は手に入る。論文の合格率は30%超と比較的高いので、受けることができれば合格の可能性はそれなりにある。
仮に落ちてもあと2年論文に専念できる権利が手に入るし、科目合格が取れれば翌年はかなり有利になる。
さらに、短答合格していればある程度の実力の証明にもなるので、それを資格相当として採用してくれる会計事務所があったり、勉強を続ける上で家族を説得しやすいといった副次的効果もある。
従って、短答合格と不合格は天と地ほどの差がある。
ならばやはり短答合格を最優先して行動すべきというのが私の考えだ。
ただし決して論文を捨てるわけではない。
そのための勉強方法について解説していく。
基本戦略
具体的勉強方法に入る前に、その土台となる基本戦略について考える。
5月短答→8月論文のストレート合格のために必要な基本戦略は以下の2つ。
- 時間配分を徹底的に工夫する(租税・経営は後回し)
- 「見直すこと」を徹底的に意識した勉強をする
なお、大前提として5月短答→8月論文のためにマジで時間は限られるので、12月短答後すぐにでも直前期の危機感を持って勉強を開始したほうが良い。
12月短答が上手く行かず落ち込んで、クリスマスやら年末年始やらで浮かれモードで勉強しなくなると、あっという間に1ヶ月が消える。
これはけっこう致命的になるので、注意して欲しい。
時間配分を徹底的に工夫する(租税・経営は後回し)
5月短答→8月論文合格を目指す場合、1~8月のうち半分が直前期みたいな状態になり、とにかく時間がない。
そこで学習時間の配分が非常に重要になる。
学習時間の配分は、本来は以下のように全科目をバランス良くやることが望ましい。
(毎月200時間勉強すると仮定した表。この通り勉強しろという意味ではない)
しかし、上記のようなバランス型の時間配分だと短答までに財務、管理、企業、監査の短答4科目の勉強時間が不足する。
そこで短答優先の時間配分は以下のような時間配分をおすすめする。
ここでのポイントは、トータルの学習時間は前述の表と変わらないという点。
トータルの学習時間=全体としてやることはわからないが、時間配分は変えるのだ。
もう少しわかりやすく区切って見ると、1~3月、4~5月、6~7月の3つのフェーズごとにやることを明確にする。(8月はバッファ)
- ①1~3月は短答4科目を理解重視でやる。計算もここで固める。
- ②4~5月は短答4科目を完全に短答特化で学習する
- ③6~7月は短答4科目はほとんど手を付けず、④租税と経営のみに集中する
- ⑤8月は論文の全国模試の結果やその時点の勉強状況を踏まえて弱い点のフォローに充てるなど最後の調整期間
それぞれのフェーズで具体的に何をするかは後述する。
「見直すこと」を徹底的に意識した勉強をする
前述の通り、短答最優先の学習においては、時間の使い方を極端に切り分ける。
そうすると今度は「知識の忘却」が問題になる。
前述の通り、財務・管理・監査・企業の論文に必要な学習は1~3月に徹底的に行った後は、試験本番まであまり見返す余裕がない。
すると例えば1~3月に財務・管理・監査・企業のインプットが完璧にできたとしても、その後4~5月に短答特化し、6~7月に租税経営に特化している間に、1~3月にインプットした知識が抜けてしまうのだ。
これを防ぐために重要なのが、記憶が抜ける前に見直すこと。私はこれを知識のインプット・アウトプットと区別してメンテナスと呼んでいる。
メンテナンスは「パッと見る」ぐらいでいい。一度に目を通す時間は最小に、回数を多くするのがポイント。
前述の通り、「理解重視」「短答特化」「租税経営特化」といった期間は設けるが、この期間もメンテナンスだけは最低限やる。
このメンテナンスを最大効率で、最小の時間でできるようにしておくことが非常に重要になる。
その上で重要となるポイントは
- なるべく情報を1箇所に集約すること
- 全体像の理解を最重視すること
1点目の情報の集約については、見返すべき情報がテキスト、答練、問題集、ノートなどに分散していると見返すのに時間がかかるためだ。
特に5月短答後は本当に時間が限られるので、今まで勉強したものを全て見返す時間なんてない。
そこで全ての情報を一箇所にまとめ、それだけ見返せばいいように準備しておく。
2点目の全体像の理解を重視するのは、全体像を見失うと知識の理解度・定着率は極端に下がるためだ。
具体的に私は以下のようなことをした。これをまとめノートと読んでいる。
- テキストの各章をA3一枚にメモリーツリー的に書き出して、その一枚だけ見れば各科目・各項目の全体像が一瞬で見直せるようにした
- 間違いやすい論点や混乱しやすい論点はまとめノートにまとめる
- 答練、問題集で間違えたものは全て1つのノート(ルーズリーフにリストアップしバインダーに綴る)にまとめ、問題を解き直さなくてもノートだけ見返せば良くする
まとめノートを作るのは、作っているときは非効率に感じるかもしれないが、その後何回も何回もメンテナンスのために見直すことを考えると、最初の作業負担を加味してもまとめノートを作った方が圧倒的に効率的だ。
それをしておくと、短答特化する4~5月や、租税経営特化の6~7月の期間も、1時間程度まとめノートの見直し時間を設けておくと、常に全科目の全論点が頭の中に網羅的に定着している状態をキープできる。
まとめノートの作り方はこちらの記事に詳細にまとめているので良ければ見て欲しい。
具体的勉強方法
具体的な勉強方法について説明する。
1~3月の学習 短答4科目を理解重視で
まず1~3月について。ここでは財務、管理、企業、監査の理解重視で論文を意識した勉強をする。
この後、4~5月は短答試験用の細かい知識のインプットに専念するし、6~7月は租税と経営に集中せざるを得ないため、財務、管理、企業、監査について論文対策にガッツリ時間を使えるのはこの1~3月しかない。
そこでとにかく死ぬ気で全論点の理解を徹底し、論文知識のインプットを完璧にしていく。
計算科目はこのタイミングで全てを完璧に理解し、苦手をなくしておく。
なお、短答と論文では求められる知識がけっこうことなるので、この点はしっかり意識して勉強した方が良い。
理論は短答と論文で必要な知識の周囲が異なる。
一方計算は短答も論文もやるべきことに極端な差はない。
従ってこのフェーズで計算科目を強みにできると、短答にも論文にもプラスなので、非常にコスパがいい。
計算を制する者が5月短答→8月論文のストレート合格を制すると言っても過言ではない。
3月に論文本試験があるつもりで徹底的にインプットをしつつ、前述にも書いたとおりその後知識のメンテナンスがしやすいようにまとめノートを整理していくといい。
理論も計算も、どんなに完璧にインプットしても必ず忘れる。
そのため一時的に完璧な状態にしても意味がないに。にも関わらず、計算の集中学習期間を設けて満足してしまう人がいる。
本当に大事なのは、インプットした知識を、試験本番まで忘れないようにすること。そのために定期的にメンテナスが必要。しかも超効率的に。そのための準備をしよう。
4~5月の学習 短答4科目を短答特化で
短答まで2ヶ月を切るといよいよ短答直前期というフェーズに入る。
この2ヶ月はとにかく細かい短答知識を詰め込むことに専念したい。
(個人的意見を言うと、4月1日からでは少し遅いので、実際には3月中旬から短答に特化してしまっていいと思う)
理論科目は一問一答形式の問題集などを使いながら、とにかく網羅的に知識を詰め込むことに専念する。
とにかく回転させ、間違った箇所に付箋を貼って、付箋を貼った箇所だけまた回してという繰り返しが王道。
間違えた問題だけノートに書き出しておくと、直前に見返すのが楽になるのでおすすめ。
計算科目はあらゆるパターンの問題に答えられるようにしておく必要がある。
そのため膨大な計算パターンを忘れないように全体を回すことになるのだが、この時期に計算問題をいちいち全部解いている時間はない。
問題は解かずに、「問題を見て、解き方をパットイメージできたら実際には計算は説かず次に行く」というイメージ。
とにかく短答は知識の網羅性が需要になるので、「知らない」「思い出せない」というものが内容、全体をまんべんなく回しながら、知識定着の弱いところ、間違いやすいところに絞っていく。
6~7月の学習 租税と経営に特化
短答が無事終わったら、その翌日からすぐに租税のインプットに取り掛かる。
経営は10日ほどあれば力技でインプットできるし、短期記憶で試験本番を乗り越えることもできるので後回し。
まずは時間のかかる租税をやる。
授業を受けきれていないなら、とりあえず授業を1.5倍~2倍速で聞き、1日3コマ(4.5時間)✕10日ぐらいでインプットを一気にやる。
そのあと20日ぐらいで復習というか、ひたすら計算を解いて慣れる期間を作る。
そして6月いっぱいでなんとか租税を固める。
租税はやるべきことは超シンプルで、以下の2つを意識するといい。
- 計算式や決まった数字を暗記する
- とにかく問題を解いて慣れる(手を動かすことが大事)
苦手意識のある人も、やるしかない。逆に、やれば絶対できる。
計算のバリュエーションも複雑性も財務や管理に比べればショボい。
とにかく手を動かして問題を解きまくれば苦手意識は払拭される。
7月は前半で経営学を一気に終わらせる。
正直経営学はどうとでもなる。
ファイナンスだけ苦手意識持つ人が多いが、とにかく計算式をインプットして繰り返し解くことで慣れるしかない。
大丈夫、複雑そうな計算式は実は大したことない。
8月の学習 最終調整
8月は、7月に受けた論文模試の結果や、そこまでの勉強の進捗状況を踏まえて、弱点をフォローする時期。得意科目は基本放置でいい。
この時期で新しいことをインプットするのは難しいので、今までインプットした知識が抜け落ちていないかの最終チェックをしつつ、足切りのリスクのある苦手科目に時間を充てる。
私の場合は7月の全国模試(全答練)で成績の悪かった監査のフォローと、引き続き租税の計算にあてた。
新しいことには手を出さない方が良い。
この時期はやるべきことが定まっていないと時間がなさすぎてパニックになるので、まとめノートをしっかり作っていると非常に楽。
5月短答→8月論文ストレート合格に関するQ&A
最後に、この記事の中で出てきそうな疑問点についてQ&A形式で整理しておく。
Q.5月短答後からで租税は間に合うのか?
これがみんなが一番気にするところだろう。
私の考えとしては「間に合う」だ。
もちろん人によって状況は変わるので気軽に大丈夫とは言えないし、保証もできない。
しかし事実ベースで短答後から租税の授業をVTRで見て0からインプットして論文に合格している人は一定いるし、私もその一人だ。
租税が間に合わないリスクを減らすために短答前に勉強しておくのももちろんアリだと思う。
そこは考え方次第。
予備校の先生にもよく相談して、慎重に判断しよう。
最終的には意思決定は自己責任で。
Q.5月短答後からで経営は間に合うのか?
これは自信を持って「間に合う」といえる。
他の選択科目はわからないが、経営の知識量は大したこと無い。
私は経営の勉強は正味100時間ちょいぐらいしかしてないが、点数的には科目合格レベルの点が取れた。
論文答練は受けておくべきか
短答までの期間にある論文答練(模試)を受けるべきかも気になるポイント。
TACだと早朝にあるアクセス答練も。
これについては、私はやらなくていいと思う。
論文答練はしかるべき準備をした上で、本番に近い環境でアウトプットを訓練するためのものと理解している。
「とりあえず受ける」答練に意味はない。
答練を受けるとかなりの時間を使うので、時間の限られた5月短答受験生は無視していいだろう。
ただし短答後に解いてみることはあるので、ちゃんと答練をもらっておくこと。
5月短答合格を優先した上で短免や12月短答合格組に論文試験で勝てるのか?
短答を優先すると論文で短免組や12月短答合格組に勝てるのか、不安になるのはよくわかる。
しかし、この記事で書いた勉強の仕方でも、必ずしも5月短答組が不利になるとは思わない。
むしろ5月短答組にも優位性はある。
例えば、5月短答組は1~5月の間の勉強の「量」と「質」の両面で、ほぼ間違いなく短免組や12月短答合格組を上回れる。
受験生なら誰しも経験していると思うが、直前期の学習効率は極めて高まる。
直前期の危機感・集中力・学習量を作るのは意識だけではなかなか難しい。
本試験まで8ヶ月以上空く短免組や12月短答合格組は、以外とスイッチが入らないままズルズル行ってしまうこともある。
そういう意味で、おそらく強制的に5月に一度ピークを迎える5月短答組は勉強の「量」と「質」の両面で短免組や12月短答合格組を上回れる可能性がある。
まとめ
以上、租税経営0から5月短答合格→8月論文合格を実現した自分の経験をもとに、学習法について書いてみた。
5月短答合格→8月論文合格をするのであれば、どこかである程度リスクを取らざるを得ない。
短答不合格のリスクを取りながら租税経営もバランス良く学ぶというスタイルもあるだろうし、自分のように租税経営が間に合わないリスクを抱えつつ短答優先で動くというスタイルもある。
正解はない。各自の状況によっても異なる。
それを理解した上で、一つの方法論として参考にして頂けたらと思う。
なお質問などあれば、TwitterのDMや、コメント欄に記入してもらえたら、可能な範囲で答えます。
人気記事、こちらも是非ご参照下さい!
- 四大監査法人徹底比較
- 公認会計士試験の予備校比較
- 公認会計士・監査法人の年収を赤裸々に書いてみた
- 監査法人の年収、福利厚生、残業、有休等、労働環境を徹底解剖
- 公認会計士の年収実態調査結果総まとめ
- 公認会計士という資格と試験について徹底解説する
- 公認会計士試験合格までの道のり1
- 【知識定着の極意】まとめノートの作り方(マインドマップ・マトリクス図)
コメントを残す