ZOZOは実は赤字とかいうデタラメ記事について

こんにちは。会計士GTRです。

どうしても気になった記事があり、 久々に記事執筆しました。

今回気になったのは「136億円の純利益は見せかけか プロが指摘するZOZOの経営状況 」という記事。

ある程度会計知識のある人が読めば「ひどい記事だな」とすぐ違和感を持つかと思うが、ネットの反応を見ると記事の内容を鵜呑みにしている人も少なくないようだ。

結論から言うと、この記事は全くのデタラメだと断言できる。

こんなアホみたいな記事に騙される人が増えてほしくないので、何がどうデタラメなのかを説明してみたい。

(記事内の数値は単位の記載がない限り百万円)

記事の概要

まず、元の記事でどんなことが書かれていた以下をざっとまとめると、以下のような内容になる。

  • ZOZOは今年の第3四半期で136億円の純利益を出しているが、ちゃんと決算をすると実際には黒字とは言えない
  • 売掛金が昨年末の253億円から387億円に増えており、売掛金回収期間が従来の3ヶ月から5ヶ月に増えた。 2カ月の間 回収できていない不良債権が100億円ある。
  • 過剰在庫も含めると不良資産は150億円ほどになる見込み。136億円の純利益というのはある意味で見せかけの数字であり、実際は、14億円の赤字であると言える。
  • 資本はスカスカで実際には赤字の状態であり、そう遠くない時期に債務超過に陥ってしまう恐れがある

はっきり言って印象操作というか、妄想というか、もはや嘘っぱち内容なので、何が嘘なのかを説明したいと思う。

デタラメ① ZOZOの売掛金回収期間は伸びていない

記事では売掛金について以下のように書いている。

元々ZOZOは売掛金の入金が早く、昨年3月期では売掛金は253億円でした。しかし、今期は387億円。前年度から134億円増えた。要するに、売掛金の回収に時間がかかるようになってしまったのです。私の計算によると、これまでは売掛金を回収するのにかけた時間は3カ月間ほどで済んでいたのですが、今期はそれが5カ月間まで延びている。つまり、差し引き2カ月の間、回収できていない売掛金があり、不良債権化していると言えます。私は、その金額がだいたい100億円に達していると見積もっています」

売掛金の回収期間が伸びたとしても、それだけで増加した売掛金が全て不良債権とするのは乱暴すぎる。そし何よりここからが重要なポイントなのだが、ZOZOの売掛金の回収期間(≒回転期間)は全く伸びていない

「え?売掛金は去年末から100億以上増えてるじゃん!」と思うのも仕方がないが、ここには2つの数字のカラクリがある。それは以下の2つだ。

  1. 売上増加のカラクリ
  2. 売上・売掛金の季節性のカラクリ

売上増加のカラクリ

まず1つめの売上増加のカラクリについて(カラクリという程でもない常識だが、、、)。

極めて当たり前だが、売上が増加している状況においては、売上の回収条件が同じなら売掛金は増えるに決まっている。

この記事ではZOZOの売上増加には一切触れないようにしているが、売掛金が134億増えているというなら、売上は前年同期から188億も増えているわけだ。

売上の増加率に触れずに売掛金の増加額だけを批判するのは、極めて悪質な印象操作だろう。

売上・売掛金の季節変動のカラクリ

次に2つめのカラクリについて説明したいのだが、それにはまずアパレルという業態の特徴について説明する必要がある。

アパレルは売上の季節変動が大きいビジネスモデルである。Tシャツ一枚でもいい夏物シーズンと、何枚も重ね着しコート等の単価も高い冬物シーズンでは売上は大きく変わる。

また、年間を通じてセールの時期の売上が極めて大きい。特に夏のセール時期である6~7月と、冬のセールのある12月~1月は売上が大きく伸びる。

そのため、売上も売掛金も季節的変動が大きく、前年同期での比較をしないと意味がないのである。

実際のZOZOの売掛金回転期間はどうなっているか

以上を踏まえて、分析をしてみる。

まず、過去3期の四半期別の売掛金の推移を見ると以下のグラフのようになる。

グラフにすると直感的にわかるが、毎年第3四半期に売掛金が大きく増える傾向にあり、2018年も過去の推移と比較して特段異常な動きはしていない。

第3四半期で売掛金が大きく増えるのは、単価の高い冬物が大量に売れる12月は年間で最も売上の大きい月であり、第3四半期末=12月末は他の月より売掛金が多く残るからである。

次に過去3期第3四半期における売上、売掛金、売上債権回転期間の推移を表とグラフで見るとこうなる。

見ればすぐにわかるが、売掛金の増加は売上高の増加とほぼ連動したものであり、過去三期で比較しても売上債権回転期間はほぼ変動がない。

以上を踏まえると、売掛金の増加は単純に売上高が増えているから増加しているわけで、前年同期は前々年同期と比較して売掛金の回転期間(≒回収期間)が伸びているという事実は全くない。

そもそもZOZOの売掛金の中心はクレジットカード会社、代引きをする運送業者、ツケ払いの決済を代行するGMOPG等が中心で、貸倒れリスクはかなり低いはずである。

デタラメ② 仮に不良資産が事実だったとしても赤字にはならない

100億の不良債権が全くの嘘っぱちだというのは前述の通り。

(同じく在庫についても、 PBビジネスに移行する中で在庫が増えるのは当然であり、 50億が過剰在庫というのは乱暴すぎる。但しこれについては売上原価との比較では過剰に見えるのも事実であり、情報が少なすぎるので特段触れないでおく)

しかし、もし、仮に、万が一、この不良資産150億円(売上債権100億+在庫50億)が事実だとしても、ZOZOは赤字にはならない。

記事ではZOZOが赤字になる理由を以下の数式で説明している。

136億の純利益-150億の不良資産=純損失14億

しかし正しい計算式は以下となる。

①195億の税前利益-150億の不良資産=税引前利益45億
②税引前利益45億-税金14億(45億の30%)=純利益30億

つまり、純利益とは税金を引く前の利益から税金を引いた額であるが、不良資産によって利益が減るなら当然税金も減る。したがって、不良資産による損失は税金を引く前の利益から差し引いた上で、その利益に対して税金を計算しなくてはおかしいのだ。

つまり、もし仮に不良資産が事実だったとしても、ZOZOが赤字になることはない。

デタラメ③ 債務超過に陥る気配はどこにもない

記事内では以下のように、ZOZOが債務超過に陥るリスクがあることに言及している。

はっきり言って、資本はスカスカの状態。実際には赤字の状態なんですから、これを放置すれば、そう遠くない時期に債務超過に陥ってしまう恐れもあります。

自己資本比率は26%はあるわけでまず「スカスカ」が抽象的すぎるし何を指すのか意味不明。

前述したように不良債権は発生してないし、発生してたたとしても純利益では黒字なのだから債務超過になりようがない。

あとついでに触れておくと、以下の記載も意味不明。

ZOZOは前澤さんにとって金のなる木のようなもので、大幅な株式分割もやらせて、自分の持ち株をどんどん増やしてきた。

株式分割は全株主の株式会社が増えるので、前澤さんの株だけが増えたわけではない。持ち株比率は全く変わらない。

 

まとめ

以上より、ZOZOに不良債権なんて発生していないし、実質赤字でもないし、そう遠くない未来に債務超過に陥りそうな事実もない。

なお記事内で同意できる部分が全くないわけではない。在庫売上・売上原価を分解してみないとわからないが在庫は一定過剰にも見えるし、このタイミングでの自社株買いによる現預金減少も気にはなる。

そしてZOZOの業績下方修正やPB不調については経営者としての責任もあるから批判するのもわかるが、事実と異なる内容を持ち出して批判するのはどうなんだ。

知識のない人間が誤った知識で書いているだけならまだマシだったかもしれないが、記事を書いているのは元公認会計士。

(過去に粉飾決算による有罪判決を受け、公認会計士資格については剥奪されているとはいえ)

どういう意図をもって書かれた記事かはわからないが、少し悲しくなった。

4 Comments

tc

いい記事ですね!
元の記事書いた奴って・・・
偽計業務妨害でもおかしくないレベルですね

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GTR

tcさん

コメントありがとうございます!
こういう酷い記事はなかなかなくならないので、自分が影響力を持って反論してくことが大事だなと感じました。

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りゅーちゃん

投資をしているものとしては利益の増加より借金の増加を見ています。商品の企画や製造をしているわけでもないのに自己資本比率は低すぎますしzozoといえども投資に失敗すれば退場する可能性は感じます。

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こんちゃん

会計士でzozoと近しい業界の東証1部上場企業でCFOをやっている者です。
私もこの元記事読んで怒りを覚えておりました。
このようなブログを書いていただきありがとうございます^^

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