SHOWROOMの経営難は本当なのか?会計士が会計士に反論してみる。

こんにちは。会計士GTRです。

「メモ魔の大誤算」SHOWROOMが経営難に喘ぐ訳という記事がベンチャー界隈、会計士界隈でちょっと話題のようだ。

記事自体はわかりやすい部分も多い反面、ツッコミどころも多く賛否両論。

会計ネタでもあるしせっかくなので自分の見解も入れつつ触れてみたいと思う。

最初にこの記事の主張を整理

この記事はタイトルの「『メモ魔の大誤算』SHOWROOMが経営難に喘ぐ訳」にある通り、SHOWROOMが経営難に喘いでいると断定した上で、その理由を説明してくれている。

経営難である理由は記事後半にある部分をそのまま抜粋すると以下の3つであるとのこと。

①赤字が止まらない
②債務超過が解消できない
③親(DeNA)のスネもかじれない

それゆえに「表面上は華やかに見えるSHOWROOMであるが、水面下では必死にもがいている経営の姿が透けて見える」らしい。

記事を読んだ私個人の感想としては「確かにそういう見方もできる。が、憶測の域を出ないものだしSHOWROOMの状況考えるとちょっと考えづらいと思う。それを断定的に書いちゃうのはどうなんだ?」という感じである。

それ、あなたの感想ですよね?」というレベルの話でしかないなと。それはそれで一つの考え方だけど、それを断定的に書くのは違うんじゃないかなと。

具体的に記事の主張に触れながら整理してみよう。

なお官報うんぬんのくだりは記事の主張の本筋ではない部分なので割愛。

赤字が止まらない?

記事ではSHOWROOMは4期連続赤字なことを経営難の理由の一つにあげている。

記事を引用すれば「設立以来、4期連続で最終赤字が続いており、しかも赤字の幅が拡大している」と。

これについては赤字が続いていることは事実だとしても、それが経営難か否かについては情報が少なすぎて特に否定も肯定もできない

記事にもある通り「先行投資フェーズ」のベンチャーでは意図して投資し赤字を出すことは良くあることで、赤字自体は必ずしもネガティブではない。

投資フェーズで事業が伸びているなら赤字幅が拡大することもよくある。

しかしこれが意図して出した赤字なのか、意図せず出した赤字なのかは外部から知ることができないので、わからん

債務超過が解消できない?

記事では直近の決算で債務超過な事実に加え、「企業価値が大幅に毀損している」から「増資で債務超過を解消したら、それと引き換えに、議決権の過半数を外部の手に渡してしまうことになる」ために債務超過の解消ができない、と言っている。

ここ。ここがツッコミどころが多いなと感じた。

個人的ツッコミポイントは2つ。

ツッコミ① 企業価値が大幅に毀損しているという指摘について

まず1つ目は、「前回のファイナンスで株価が下落して見えるのって、絶対なんかウラがあるでしょ」ってことだ。

これは別に明確な根拠はない。あえてハッキリ言うと、感覚的な話だ。

確かに外部に出ている数字だけを見れば(記事の情報が正しいなら)企業価値が毀損しているという見方もできるとは思う。

しかし、ベンチャーファイナンスにある程度詳しい人からすれば、「そんな調達、普通しなくね?」という感覚があると思う。

なにしろ毎年億単位の赤字を出している会社である。そんな規模の投資をしている会社が、たかだが1200万円のキャッシュのために株式の10%を手放すはずないでしょ、ということだ。

確かに本当に資金繰りに窮すればなりふりかまわず少額のキャッシュのためにそれだけ株を発行することもあるだろうが、資金潤沢な上場企業の子会社である。

この違和感を例えるなら「毎年100万円とか300万円とかの規模を株に突っ込んでる若者が、金持ちの両親がいるのにたかだか10万円を手に入れるために自分の臓器の一部を売り払った」ってイメージだ。いや、そんなわけないやろと。

なのでこのラウンドのファイナンスで企業価値が下がって見るのは、通常の資金調達ではなかったからだと思う。(創業者に株を渡すためとか、SOとか)

ツッコミ② ベンチャー企業のバリュエーション評価について

記事の中ではバリュエーションに関する部分で以下のような記載があった。

第三者である専門家が、企業の実態を詳細に調査し(これを財務デューデリジェンスという)、妥当な株式の価格を算出(これをバリュエーションという)する。

バリュエーションの手法は複数あるが、ベンチャー企業の場合、DCF(Discounted Cash Flow)法を使うのが一般的だ。

外部に公表していない詳細な財務情報を徹底的に調べ上げ、将来の成長性なども加味したうえで、適正な企業価値(株価)を算出するというプロセスを踏む。そのため、バリュエーションの結果である株価は、企業の実態に限りなく近い数値といえる。

この辺は読んでてすごく気になってしまった。

まず、ベンチャー企業のバリュエーション評価がDCF法が一般的ではないだろう。

DCFも使うが、上場時のバリュエーションをマルチプルで算出してそこから割り引くとか、DCF以外の方が多いと思う。

あと「バリュエーションの結果である株価は企業実態に限りなく近い数値」という部分。

ベンチャーのファイナンスに企業実態もクソもない。

投資した何倍ものリターンを生むこともあるし(というかVCはそれを目当てに出資するんだが)、潰れて投資がパアになることもある。

実態なんてものは結果論でしか語れないし、財務DDだけで実態が正確にわかるなら苦労はしない。

また第三者専門家による評価は確かに行うだろうが、これはあくまで補足的なもので、実際の株価は「決め」な部分が大きい。

まるでベンチャー企業の企業価値を正しく算出する計算式があり、SHOWROOMの企業価値が低いのが確固たる事実のような記載はけっこう違和感を感じる

親(DeNA)のスネもかじれない?

記事では親会社であるDeNAによる支援について「DeNAもここ数年、業績が低迷している。先の見通しが立たない赤字会社の面倒を見るほど余裕はないだろ」と書いている。

これもけっこう疑問符が付く。

いや、もちろんDeNAの業績は低迷していると見ることはできると思うし、選択と集中で子会社の追加支援を取りやめる可能性もあると思う。

けど言うても連結で1241億の売上で131億の純利益(利益率10.6%)という業績で、キャッシュも1013億、純資産2568億という会社である。

「ここ数年、業績が低迷している」から親会社の支援も受けられないと断定するのはちょっと無理があると思う。論拠として弱すぎる。

何なら100億円のファンドを組成してスタートアップ投資するって記事が先日出たばかりだし。

あとDeNAの有価証券報告書見るとSHOWROOMに対して貸付してることは書いてありますね。

まとめ

以上をまとめると、記事に書いてること全部「その可能性はある」し、「そうじゃない可能性もある」。

実際のところSHOWROOMが経営難なのか、予定された赤字・債務超過なのかもわからない。

結局、情報を開示してないベンチャー企業について断言できることは少ないので、いずれにしろ憶測で語るしかない。

憶測でしか語れない以上、断定的表現で記事を書くことはフェイクニュースになりかねず、ちょっと無責任ではないかなと思った次第です。

だって、ベンチャーなんてだいたい赤字だったり、債務超過までいかなくても純資産が希薄で安全性分析とかしたら悪い結果になる会社がほとんどなわけで、会計士が一般的な分析を当てはめてネガティブな記事を書くなんていくらでもできてしまう。

それでも一般常識で考えればうまくいきそうにないビジネスや、誰も信じない未来を信じてリスクをとって社会を変えようとしているのがベンチャー企業なわけだ。

記事自体は素人でもとてもわかりやすく書かれているが、それゆえに断定的な書き方は読んだ人の誤解を生みそうだなと感じる。

なので、結論として自分が言いたいことは情報の限られたベンチャーの本当の実態なんて憶測でしか語れないので断定的にネガティブなこと書くのはやめませんか?ということ。

おしまい。


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